手堅い演出だけで心底怖がらせる、正統派のサスペンス・スリラー。どんでんに次ぐどんでん返しで、カタルシスも充分すぎるほどの大満足。
最初は、わざわざ主人公の前に死体を晒すのが「不必要に持って回った仕掛け」「B級なコケ脅し」に思えて興ざめだったのだが、話が進むうちにその必然性も判明し、改めて脚本の周到さに恐れ入った。
恐怖映画の重鎮ほか配役のミスリードも完璧で、設定も含め「いかにもB級な設え」を逆手に取って仕上げられた一級品。とはいえ、犯人の最後の行動は、あまりに短絡的で笑っちゃうぐらいだから、一気に安っぽくなるんだけど。
あとは、いかにもなポスター・ビジュアルも相まって、パッと見、B級にしか見えないのが哀しい。だからこそ、意外性が楽しめたのかもしれないが。
喩えて言うなら、いつも口が半開きで見た目クルクルパーっぽいけど、実は将棋がむちゃくちゃ強い、みたいな。