継

風花の継のレビュー・感想・評価

風花(1959年製作の映画)
4.0
地主と小作人の差別的な主従関係の中, 二代にわたって報われぬ恋に翻弄される親と子を描いた物語。

和紙に毛筆で書いたスタッフロールが流麗で,
ソフトのパッケージ↑はモノクロですが, 信濃路の田園風景や雪を頂く北アルプス(?)が美しい, 1959年製作の「カラー作品」です。


戦中〜戦後の, 恐らく日本中にあったであろう小さな農村が舞台。
『陸軍』を観て, この人が撮った映画は全部観ようと心に決めた木下恵介監督作品。

大地主(祖父母)と, それに逆らえない無力な長男夫婦&小作人達と, それに抵抗する若い世代を,
・没落しようがあくまで家(体面)に執着して他者に高圧的に振舞う者
・それに逆らえず不本意ながらも従って住まう者
・それに抗って結果的に出て行く者
ーという風に、本作は表層で身分違いの恋を描きながらその裏では,
「家」への思いを各3世代で描き分ける事によって, 戦中〜戦後当時の(軍国主義的な)風潮とその未来へ向けて何事かを言わんとするかのようにも見受けられました。


🔁
序盤に「十九年前」と一度だけテロップが出るのを最後に, 以降ストーリーは不案内なまま過去⇔現在を自在に行き来するプロットで展開。
捨雄(すてお↓※注)の赤ん坊時代から学生時代, 更に18歳となった姿をシームレスに観せる手さばきに驚いていると, 話は一度二度と過去へ立ち返り, 同じ場面を異なる角度から改めて映して,
複雑な人物相関や背景をこちらへ知らしめ, 後出しで肉付けするー。
物語の構造/そのテクニックが単なるひけらかしではなくて, 登場人物が抱える事情や心理にしっかりと寄り添うものになっているのが素晴らしい。

目論んだ養子縁組が叶わなかったさくらの結婚に, さぞ落胆してるのかと思いきや “私は世間を見返してやった!”と掌を返すように自己を肯定して醜悪な本心を晒す姑が強烈。
合わせて,
(↑注※)出征前夜に心中を図って亡くなった息子(因みに英雄という。)の血を継ぐ赤子👶に「家に泥を塗った恥晒しの代わりにお国の為に捨てる命だから」と勝手に「捨雄」と命名する祖父(地主)の描き方に, 作り手の意図と思いが透けて見えるようでもありました。


祖父が怒りに任せて英雄の骨壷を橋の上から信濃川へぶん投げるモノ凄いシーン(^_^;)で, 止めようとして家から橋までずぅーっと引きづられてく不憫な笠智衆や,
金を借りに来た癖に億面もなくさくらの急所をグサグサと突き刺す言い草(^_^;)で言いたい放題な女友達とか, 多分狙いじゃないんだろうけど笑ってしまったシーンも。

もっと観られて然るべき。この監督の撮る映画は面白いです(^^)。
継