もっちゃん

未知との遭遇のもっちゃんのレビュー・感想・評価

未知との遭遇(1977年製作の映画)
4.7
はまりにはまって「オリジナル版」「特別篇」「ファイナルカット」すべて見比べてしまった。もっと早く見ておくべきだった。童心を忘れない大人たちの背中を押してくれるような作品。

昨今のSF映画を見てみると皆がそろって異星人を侵略者として描いている。だが考えてみると我々が幼かった頃、異星人の存在を、宇宙を夢想していたあの無垢な時代にそんな凶悪なものは登場しなかった。
少なくとも私が子供のころに夢見ていた異星人は友好的だった。人類よりも優れた文明を持ち、優しく人類を啓蒙していく存在、現実の残酷さに傷ついた私の頭を空想で満たしてくれる存在。「異星人」=「侵略者」というレッテルを貼ったのは童心を忘れた大人たちによってである。

主人公二アリーは童心を忘れない(というよりも忘れられない)精神年齢が低い大人。恐らくスピルヴァーグ監督自身を投影しているのだろう(さらに連れ去られた子供バリーにも)。最終的に家族を捨ててまで宇宙を選ぶほど好奇心のみで生きているような人間であるが、恐らく監督自身はそうではなく、しかし様々な物をかなぐり捨てて趣味に没頭したいという欲望から二アリーにそれを詰め込んだのだろう。

後に『ポルターガイスト』や『インディジョーンズ』へと続くような描写や監督が強い影響を受けたというヒッチコックの『北北西に進路をとれ』のオマージュのようなシーン(デビルズタワーを上るシーンは『北北西』のラシュモア山のシーンを彷彿とさせたり、UFOが接近するのも「北北西」からである)もあって連綿と続く系譜の一端を垣間見れたようでうれしくなる。

そして何といってもマザーシップとの交信のシーン。あの場面で涙腺崩壊。初めて人外のものとコミュニケーションを取ると感動で涙してしまうかもしれない。今まで自分が夢想していた存在とコミュニケーションを取っている!しかも異星人とその喜びを表現するかのようにシンフォニーを奏でている!生涯ベストに入る最高映画!!