ツクヨミ

ゴーストワールドのツクヨミのレビュー・感想・評価

ゴーストワールド(2001年製作の映画)
4.8
この世界の生きづらさ.他者との違いによる葛藤をティーンエイジャー視点から見つめたマイノリティ映画。
青春映画の中でもけっこうカルト的人気があるらしい本作、リバイバルとのことで楽しみに見に行ってみた。
まずオープニング、なにやら60年代ボリウッド映画のダンスシークエンスのサンプリングから幕を開ける。キレッキレなアップテンポジャズでアパートの部屋内を横移動していき、主人公イーニドが踊り狂うエキサイティングな始まりに狂喜乱舞しそう。
まあ本作はポスターのイメージからすると近年の"ブックスマート"などのガールズバディ映画っぽく見える、だが蓋を開けてみればその予想は良い意味で裏切られた。高校卒業と共にまだ補修が残ってるからと進学や就職もせずにプラプラしてばかりのイーニド.その反対に嫌々ながらもカフェで働き社会へ出ていくレベッカの二人の違いが徐々に如実に顕になっていく、高校時代1番の親友も進む道が違えば徐々に離れていってしまうそんな儚さとイーニド側からみた"自分とは違う"という焦燥が見てとれる。
なのでわりかしというか本作はガールズムービーでは全くなかった、途中で登場するスティーブブシェミ扮するオタク男が実はめちゃくちゃ重要なファクターとなりマイノリティと呼べる我が道をゆくオタクたちを描いた映画だったのだ。仕事をしながらもジャズレコード収集が趣味のブシェミとの出会いがイーニドを感化させ、好きなことをして生きていくという夢を彼女に与える。その影響でブシェミを支援していろいろ頑張ったりするのだが、実はけっこうめんどくさい性格が彼女にはあった、それはもはやスコセッシの"レイジングブル"並に人間関係を壊してしまう要因があること。一言多いというか皮肉めいた発言を繰り返してしまい人間関係が拗れてしまう、そして後になってから後悔するという側面がマジで人間臭くて泣けるぐらいだった。いろいろ自分で考えて行動するんだが全てが裏目ってしまい孤独に消えていくようなラストまで秀逸、彼女がバスに乗った理由というか意味は崩れてしまった関係が残る街なら逃げたい思いが反映されていると感じる。現代日本でも小さく取り上げられていた人間関係を定期的に一度リセットするという点からして、実は公開時より現代の若者に刺さるような要素があるような気がしてならない。
あとはわりかしジャズが先行する選曲や普通にPOPで映える衣装などビジュアルでも良い部分がたくさん、しっかり青春映画として成立する点も◎。だがやっぱりラストの展開からして個人的には孤独映画と言いたい要素が強いかなーって思うしイーニドにめちゃくちゃ感情移入いちゃう唯一無二な作品かもしれない。それとオープニングのサンプリングされたボリウッド映画のダンスシーン中毒性高すぎる笑、ついつい踊り出したくなる良い曲と狂ったダンスに痺れちゃう良オープニングだね。
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