ツクヨミ

悪は存在しないのツクヨミのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

なかなか一筋縄ではいかない社会派田舎ものの中に散りばめられた濱口竜介流会話劇が成せる怪作。
濱口竜介監督作品。2023年ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞し話題な本作を見に行ってみた。
まずオープニング、ゴダールみたいなタイポグラフィで英題"EVIL DOES NOT EXIST"が提示され超ローアングルの長回しで森の木々と空を映していく。そこに不穏ながらエモーショナルな石橋英子さんのスコアが重なる言いようもない美しさにガッツリ魅せられた。
まあ本編はクソ田舎を舞台にし、グランピング施設が作られるようとすることから都会ものと田舎ものが対立する構図が生まれる最近記憶に新しいルーマニア映画"ヨーロッパ新世紀"みたいな社会派田舎話。冷ややかで美しいバキバキショットの連続の中、痛烈な社会風刺の目線が脚本に生きているようだった。
あと濱口竜介監督作品目線で言うと相変わらずの会話劇が目を引く耳を引く、グランピング施設の説明会での緊迫な言い争いはまさにジョンカサヴェテスっぽいし、打って変わってグランピング施設を初めようとする元マネージャーと女性社員の社内会話はジャームッシュの会話劇のようにクスクス笑えてホッコリさせられる。多様な会話劇が空間を支配するまさに濱口竜介監督作品でめちゃくちゃ魅せられ面白い。
だがしかしいやはやなんとも筆舌しがたい作品だろうか、社会派作品にしては問題を掲示するだけで答えは見せない。解釈仕様がありすぎる謎のスリラーラストとかなかなかに考察しがいがありすぎる点で濱口竜介監督今回はなかなか攻めてるなと感じた。映像としても撮影とかなかなか海外向けなバキッと画角だし、長回しの横移動ショットとかマジで美しすぎる。
そして今回のラスト、個人的には"ミツバチのささやき"オマージュな精霊説を推したい。メタファーとして自然を守る守り人な精霊が余所者を屠る話でもあると思うし、いろいろとわからない謎仕様も少々ファンタジーに決着をつけられると思う。まあ正直会話劇を眺めてるだけでも大満足だし、考察しなくても全然楽しめる作品ではある。だがここまで喋りがいがある作品を今回作ったというのが濱口竜介監督のフィルモグラフィー的にはなかなか面白いんじゃなかろうか。
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