みかんぼうや

フロスト×ニクソンのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

フロスト×ニクソン(2008年製作の映画)
3.7
ウォーターゲート事件で失脚したニクソン大統領とイギリスの人気テレビ番組司会者デイビッド・フロストによる、テレビのインタビュー番組の舞台裏と当日の対談を描いた本作。

本作の中でも例えられるように、対話劇を観たというよりも、ボクシング映画を観たような、インタビューというフォーマットでの2人の言葉での殴り合いによるヒリヒリとした緊張感。収録の休憩中に両陣営のスタッフが飛び込みアドバイスをする様子は、まるで試合中のインタバールにセコンドが作戦指示をする様そのもの。

TV界で会話術を磨き実績を積んだ挑戦者フロストが、討論のチャンピオンであるニクソンに挑むようなトークバトルが非常に面白かった。

ただし、本作内で描かれる2人の対談シーンは総計30分弱で、それ以外は対談までの前後の過程やカメラに映らない裏側を描いているので、あくまでも当時のインタビューの“緊張感ある雰囲気”を楽しむもので、細かい会話の内容については、象徴的なシーンのみを切り抜きスポットを当てている程度。

ただ、こんなインタビューがあったことはおろか、ニクソン大統領と言えばウォーターゲート事件により辞職した、という事実以外は何も知らなかったので(私が生まれる前の事件ですし)、本作をきっかけに、実際のインタビューではどのようなことが語られていたかも気になり、ウォーターゲート事件そのものやニクソン大統領という人物についても俄然惹きつけられました。いやぁ、映画ってやはり知的好奇心をそそられるなぁ。

映画としては、さすがロン・ハワード監督、というテンポも良く飽きずに安心して観られるまとまり感でしたが、唯一苦言を挙げるとすると、作中に出てくるキャロライン・クッシングという女性の存在が疑問。正直、本作では登場人物が男ばかりであまりにむさ苦しかったので、ゴージャスなハリウッド美女を強引に入れ込んだという印象しかない。登場シーンこそ、この先の関わりを期待させるものの、その後は主人公のフロストの横にくっついているだけで、大した会話もなく・・・あとはフロストにチーズバーガーを買ってくるくらい。あとで調べたところ、当時のフロストの恋人ではあったようだが、話の本流に全く絡まない彼女は必要だったのか?という違和感が強く、途中からずっとノイズになってしまいました。

とはいえ、映画としてのまとまり感もよく、米国歴史上、任期中に唯一辞職した人物への接点となる非常に見応えのある作品でした。
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