三畳

ハイヒールの三畳のレビュー・感想・評価

ハイヒール(1991年製作の映画)
4.2
アルモドバル監督、1980年にデビューしてから1,2年に1本、長くても3年とあけずにコンスタントに作品を20本以上発表していて、
私は現在10作観賞しましたが、それらがお互いに比べられてもどれも見劣りしない、ひとつひとつが珠玉のエネルギーを放っていて、
40年間常に物語を制作設計しこの色彩の中を生きているのかと思うと、めちゃくちゃ尊敬します!

おなじみのキーワードはいくつかあって、例えば親子で同じ人と関係を持ってしまうとか、狭い範囲で矢印が絡み合う相関図とか、暴君のレイプとか…でも、当たり前だけどそんな題材を踏んでいく人間が違えば全く違うものとして機能し、いつも意外な方へどんぶらこと人生が転がっていくのがとても面白い!

まあ、実際この状況でこんな行動するか?っていうわけわからん突拍子のなさも新鮮な理由で、それがアルモドバル色なのかスペインのお国柄なのかわからないから、別のスペイン監督を見なくちゃ。(そういえばマジカル・ガールもあたおか映画だったっけ。蝶の舌や海を飛ぶ夢は良いヒューマンだったと記憶していますが)

あとこれもおなじみ、テーマを歌で表現するシーンでは、神の視点が登場人物に憑依するようで、幻想的ですばらしい。
今回は一番好きな「ジュリエッタ」にも通じる、母娘の一筋縄ではいかない確執。テーマが似てるだけでそれ以外に同じところは全くないので、このひと人生何回目なんだろうか?なぜこんなに女の愛憎切なさがわかるんだ?

ハイヒールが大人の女の象徴なら、見た目の美とは裏腹に窮屈で不安定な内面を表しているのかな。それを言ったらミニスーツもドレスもフープピアスも美と引き換えに女から機能性を奪うものでしかないけど。

泣いても笑っても大輪の花が咲き誇るようなマリサパレデス演じる母はド派手でカッコいいのに、性格が…。
一人の男と寝た3人の女を並べて同時に尋問するってシチュエーション凄すぎ。コメディに乗せられながらも、レベーカが止めもせず流す涙にはいちいちヒリヒリしてしまったから、私は母としてではなく娘として共感する生傷がまだまだある。
三畳

三畳