三畳

ペルリンプスと秘密の森の三畳のレビュー・感想・評価

ペルリンプスと秘密の森(2022年製作の映画)
4.0
見たものをそのまま受け取っていればどんでん返しというほどのオチではなく、それを明かしてくれなくても十分過程で伝わっている。
なぜならむしろ森での任務の方が、やっぱり彼らの・我々の真実だからだ。姿や属性はほんとは重要じゃないから。
とはいえ物語全体に綿密に敷いてきた導火線にやわらかい炎を一気に灯すように、振り返ったとたんに感動がじんわり暖かく広がる。

帰りにシアターの外に出て、ポスターのふたりがぎゅうっと抱き合っているのを見た時に一番深く意味を味わえた。

人間はこういう映画を時々みてチューニングしないといけないよ本当。

「父を探して」と同じく、ひとつひとつ飛び跳ねようとする原始的な命の輝きが、資本主義社会に組み込まれているときはなんと無力なんだろう…と否応なく引きのカットで見せるのがショック。
でも、記憶の中の大切なメロディが答えに導いてくれるというのも共通している。


よく映画のキャッチコピーで「大切なことを教えてくれる」という言い方があるけど、この監督の映画は最もそれを感じる。
この監督の抽象化はただの置き換えなのでひとつひとつ元の意味に解凍できてしまい、結果直接的すぎて、一周回って暴力的なほどストレートに思想が撃ち込まれる。

でも撃ち込み方が希望的で好きだ。

前作の方が全編サイレントだったからより凄かったかな。
前作より画変わりしなくて、多分中盤の最も大事な鳥さんの説明パートでうたたねしてしまった…
キャラも主線がないのがベクター絵っぽいというか、北欧アニメっぽく、なかなか乗れない。
戦車とかメカの動物デザインはさすがかわいい。


また前作同様、工業vs自然、戦争vs平和、貧vs富などいろんなものをひっくるめて善悪二元化している気がするのでちょっと子供に見せるには危機感を覚えるかな。それらがつながっているから分断を生むのはわかるんだけどね…!


水江未来オマージュがあって、日本人としてぶちあがった!(監督の子供が初めて見た映画は水江未来らしい。英才教育すぎるー!)
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