三畳

ドリー・ベルを覚えているかい?の三畳のレビュー・感想・評価

3.9
街の非行を止めるためにバンドを結成させるっていう論理展開が謎だけどそういうものなの!?「今、このエリアにバンドが1つしかないのは由々しき事態だ!」なんて神妙に議論してるのでもう楽しい!

決して少年たちがジョン・カーニーの「シング・ストリート」みたいに自発的にバンドを結成する青春音楽映画じゃないです。バンド名、練習、音合わせ、いざこざ、仲直りといった凡庸な要素はひとつもない。
なんか偉い大人が誰にバンドをやらせるか指名してパートまで決定してる。そんでもう楽器与えてライブ。
それにどっちかというと音楽より動物小屋のウサギ相手に練習してる催眠術に夢中。

「猿もタバコ吸うかなw」なんて考えたことない台詞がぼこぼこ出てきて映画のペースに乗せられる。
何度も顔を合わせてるような懐かしさを覚える安定のスラヴコ・スティマチ。

クストリッツァのヒロインはいつも薄汚い髪ボサボサの捨て犬のような格好で登場して、第一印象はガサツな感じ苦手だなと思うんだけど、
恋心が反映した瞬間に信じられないぐらい美人でキュートに映す!カメラマンが魔法使いなのかな?

共産主義の父、今だったら児相案件…。
クストリッツァの映画は、わかりやすい善的なヒーロー気質の主人公が存在しないと思う。正義のモチベも悪事のモチベも恋の衝動によるもの。
強くもない、努力が実るわけでもない、約束は破る、そんな普通の人たちが強者から都合よくかき回されたり無情にも大切なものを奪われたり大きな力の前でなす術なく翻弄されっぱなしの日々で1回だけ小さな拳を上げる瞬間のエモ、そんな感じ。

父が死んでみんなが部屋に集まって喪に服しているタイミングでも、ずっとほしかった自転車が届いて思わず笑みがこぼれる子供らしさ。

アンダーグラウンド4Kに行ける日が去年10月から1日も確保できてなくてマジつらい。
三畳

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