むさじー

博奕打ち 総長賭博のむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

博奕打ち 総長賭博(1968年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

<任侠道に縛られた心の葛藤をギリシャ悲劇風に描く>

仙波(金子)という策士の悪玉がいて、やがて乗っ取ろうと若い石戸(名和)を親分の座に据えたが、それが任侠道に反すると憤慨した兄貴分の松田(若山)が暴走し、暴走を止めようとした中井(鶴田)が盟友松田を殺さざるを得なくなる悲劇へと、畳みかけるように展開していく。
そこに、任侠道を守れず夫への詫びから自死を選ぶつや子(桜町)、兄と夫の任侠道を巡る対立に為す術のない弘江(藤)という女性の悲劇が加わる。
任侠道を通すために殺さなくとも済むはずの殺人を犯し、死なずに済んだはずなのに死んでいく、そんな不条理が描かれる。
任侠映画の勧善懲悪の直線的な図式ではないものの、義理と人情の葛藤が生んだ悲劇で展開し、やはり任侠世界の中にはあるのだが、登場人物一人ひとりの心の動きや葛藤がしっかりと描かれた群像劇でもあり、従来の任侠路線を超えた優れた人間ドラマになっている。
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