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スワロウテイルのrollinのレビュー・感想・評価

スワロウテイル(1996年製作の映画)
5.0
クビキレ。

Best ofあんちゃんにしてBest ofロン毛。上海流氓の若きリーダー、劉梁魁のカリスマ性がハンパない。AKIRA、ブレランと並ぶ人生の超重要SF映画。岩井俊二、種田陽平、小林武史、そして日本が誇る天才カメラマン、故・篠田昇というすんごい大人たちがすんごいお金を遣ってすんごい本気を出したらすんごい領域に到達してしまった日本映画の金字塔。

この映画の魅力は何と言っても世界観。
ブレラン以降市民権を得たアジアの場末風景はもとより、空き地や現実の日本と地続きなセット感も円盗たちの開拓精神、円都ドリームを象徴した表現になってるね。彼らが饒舌に話すミッシュマッシュは既にグルーヴの奔流と化しているし、Jポップや当時のトレンディードラマ俳優を起用するバランスも斬新。章立てされたストーリーのジャンルの多様性も人種の坩堝である円盗たちにリンクしていて、ブレランをさらに猥雑に、野暮ったく逆輸入した本作の世界観は、俗物的リミックス感覚のひとつの発明。
優れたSF作品は往々にしてそこに住む人々の生活の知恵を上手く描写することで想像の世界にリアリティを与えているけど、本作ではむしろ円盗たちの生活様式こそがメインの語り口。なのでこんなトンデモ設定にも関わらず映画は破綻せーへん。

群像劇として描きつつ登場人物を徹底して世界観の奴隷にすることで、映画は混沌とした円都に一旦の調和を取り戻そうとする。
そうだとしても円都に住む円盗たちの物語はあまりにもエモーショナルで、役者たちの演技や存在感は素晴らしい。特に映画の最後、膨大な情報量を垂れ流してきた末に最後のピースが拾われるラストシーンには格別の感動がある。
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