1969年のベトナム戦争下、兵士がミンチ肉になるほど激戦になることから"ハンバーガー・ヒル"と呼ばれているアシャウ渓谷にある高地を占領するために激戦地に赴く兵士たちを描いた戦争映画。
ドキュメンタリーで実際にベトナム戦争へ行ったことのある監督ということで激戦を繰り広げる様を淡々とドキュメンタリータッチで描いていく。ドラマチックな演出がほとんどないからこそ、バタバタと登場人物が死んでいく姿がドライで物悲しい。見せてくれるのではなく、見せつけられる。そんな映画だった。
戦争映画ならではの大迫力の戦闘シーンや残虐なグロテスク描写はもちろんだが、敵を倒した感覚もなく、優勢かどうかも分からなく、勝っているかどうかも分からない。ただ丘の上にいる敵を撃ち殺していくしかないから、カタルシスがなく嫌になるだけでしかないシーンなのがリアルで良い。兵士たちは実際そうだったのだろう。
淡々としすぎていることが逆に反戦映画として良い味を出していた。戦闘の合間の会話劇も見事。アメリカでのシーンを一切描かずに戦地での会話だけで想像させていくのが、ドキュメンタリーで兵士にインタビューをしているみたいで良い。役者の演技も相まって非常にグッとくるシーンだった。戦地しか描いていないのに、派遣前と派遣後の姿が見えてくる描写は見事。
国のために異国で死にものぐるいで戦い、故郷に帰ればカウンタカルチャーと反戦ムードで居場所がない。反戦的になったのは良いが、命を懸けて戦った兵士にとってはとてもいたたまれない気持ち。なんのために戦ったのか。なんのために仲間の命が失われていったのか。戦争は何も生まないということを実感する。反戦ムードが強くて泥沼化していったベトナム戦争は特に兵士たちの帰還後の置かれる立場は辛かっただろう。
今も世界では争いが絶えない。戦争は愚かだ。でも、命を懸けて戦った兵士たちを忘れてはならないし、リスペクトをしなければならない。彼らも被害者だ。