くりふ

マグダレンの祈りのくりふのレビュー・感想・評価

マグダレンの祈り(2002年製作の映画)
3.5
【女囚三人娘/けもの尼の館】

『あなたを抱きしめる日まで』より以前に作られ、同じ題材を扱っているので併せてみてみました。

1960年代、婚前交渉などの「罪」でマグダレン洗濯所に収容された少女たちの無慈悲で過酷な日々が描かれます。

マグダレン施設で助産婦をしていたジューン・ゴールディングによる回想録を元にしていますが、内容はかなり異なりますね。後で読んだら別の意味で驚きました。

従兄弟によるレイプ、未婚で妊娠、ヤリマンという噂…という「罪」で冷酷尼僧が管理する洗濯所(従事すれば罪を洗い流せるらしい)にぶち込まれた三人娘を中心に、脱走失敗娘やオツムがアレ娘、すでに老女となった娘、などが絡み進みますが、まあ、まるで救いがありません。

尼僧らが少女たちに行うのは贖罪へのサポートではなく、救えぬ罪人とみての虐待です。

キリスト教の根底に、創った者と創られた者、という差別がある以上、絶対的権力がまかり通る閉鎖空間では、神に背いた者は神の名のもとなら好きにしていい…ということもまかり通ってしまうのだと思いました。

このマグダレン施設は1996年に閉鎖されましたが、21世紀に入ってなお、カトリック教会による性的虐待事件が騒がれています。でも私は驚きません。あって当然の性欲を封印すれば歪むのも当然で、そのはけ口が弱者に向かうのもわかり易いことです。神がいるならなんでこんな酷いこと放置してるのかは不思議ですけどね(苦笑)。

上記に絡み、わかり易いシーンがありました。尼僧が無慈悲に行う、少女たちを全裸で並べての品評会です。誰が巨乳で貧乳か、陰毛大賞は誰かを喜んで品定めしてんですよ!…キモチわるい。これ、実際にあったそうです。

DVDの特典映像にドキュメンタリーがあり、元入所者の女性が語っていました。さもありなん、と思いましたけどね。

しかし本作、映画作品としては、とても丁寧に作られているものの、満足度はイマイチでした。虐待を延々と描いた先で、で、どうすればいいの?と疑問がどうにも立ってしまう。

こういう事実がありました、で終わってしまい、諸悪の根源には踏み込んでくれない。まあ、ここまで描くだけでもキリスト教圏ではじゅうぶん、スキャンダラスだったろうとは思うのですが。

上記のドキュメンタリーで、孤児院にいて、美人だから問題を起こす前に施設に入れられた(ヒデエ理由)…という女性がいましたが、はっきり「神がいるならこんな目にはあわなかったはずだ」と言い切っていたのが心に残りました。

果たして、こんな鬼畜な事件はどこかで終わるのでしょうか?…私は、このままではなくならないと思ってますが。

ちなみに原案の方は、出産施設に絞った内容でした。出産後、出所金を払えなければ母子は三年間共に施設で過ごし、期日が来れば強制的に子供が養子に出される無情なシステム。

で、出産の処置がまた酷い。麻酔もなく、声を出すのは禁止で、産後に裂けた陰部を縫うことも禁じられ…ひょっとして家畜以下では? と思わせるものでした。

こちらも読み物としてはどうよ、とは思ったものの、後世に残すべき貴重な記録なのは確かですね。

<2014.4.6記>
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