rollin

大阪物語のrollinのレビュー・感想・評価

大阪物語(1999年製作の映画)
4.8
かなり昔に実家で、あれはTV放送だったのかレンタルビデオだったのか忘れたけど、大阪物語が流れていた。その時から大阪物語すげぇ面白いという印象がインプットされて、ふと、この映画のことを思い出す瞬間がこれまで何度もあった。

極限まで誇張された大阪という記号都市。これは西の少女版AKIRAだ。非関西圏の人間が夢見るコテコテ感を凝縮・再現したような本作のノリは、最早ファンタジーの領域であるけれど、関西を離れて暮らす今となってはこれくらいやってくれた方が身に染みる。浜村淳。泣けるやん。

そんなファンタジーの中で、所々妙にリアルなやりとりがあることがこの映画の魅力。
自分が一番好きなのは、朝帰りのジュリーが家族の雑魚寝する布団に潜り込んだ時のまどろんだやりとり。布団の中でおならをしてしまった弟君に、ジュリーが「ねぎ焼き食うたやろ?」と言うシーン。

主役は街。
長回しの多用と意欲的なカメラワークは、登場人物たちをあくまで風景の一部として描く。河川敷の平屋や路地裏の横丁、新世界、天神橋筋商店街、ネオン煌めくブラックレインの街、大阪。そんな中で池脇千鶴唯一人が、人や時代や街や町蔵の醸し出すノスタルジーに抵抗し、コテコテの波に流されまいとカメラを見つめる。あぁ、やっぱすげぇいい。
rollin

rollin