これが初監督作品とは…
ただただ、圧巻。
お笑いで天下を取った人なので、どうしたら笑いがおこるかを、どうしたら面白い映画になるかという視点で転換させただけで、元々のセンスが突き抜けている。
監督をやるといってもわからないことだらけの手探りで、撮影スタッフの助けありきでの出来だったんでしょう。
とはいえ、この始終漂う不気味で不穏な空気の中にある静寂と、こちらに感情移入させない少ない会話、所々に入る笑いの要素と、その世界観が素晴らしい。
冒頭、少年たちにボコられるホームレスに焦点をあて、そのままひとりの少年が帰宅する家、続いて直ぐに刑事の我妻がその家を訪問し強引に少年の部屋に入り込むところからひたすら殴る我妻だけを撮る構図。
この一連の流れで、一気に引き込まれる。
そしてなんとも言えない恐ろしさに疲れる…
次の展開を読ませない進め方。
唐突に始まる暴力。
終盤、倉庫の銃撃シーンの凄惨さ。
間の取り方と、陰影。
終わり方も酷い。
気狂いを美しくも哀しく描くことにおいて、北野武は別格。