佐藤克巳

乳房よ永遠なれの佐藤克巳のレビュー・感想・評価

乳房よ永遠なれ(1955年製作の映画)
4.0
「恋文」では木下恵介、「月は上りぬ」では小津安二郎の支援を受けての名作だが、大女優田中絹代が自らの構想で、気高く気品ある上質のヒューマン映画を演出出来るとは思っていなかっただけに良い意味で期待を裏切る傑作。前夫織本順吉との確執と森雅之への儚い想いと死、乳がん手術後の新人葉山良二の登場があって、女の情念を強く押し出す月丘夢路の好演は素晴らしく、溝口健二の影響の大きさを感じた。川崎弘子、大坂志郎、杉葉子から子役に至るまで好配役で、画面全体の隅々まで神経が行き届いた、近年では絶対出来ない好編。
佐藤克巳

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