佐藤克巳

夜の女たちの佐藤克巳のレビュー・感想・評価

夜の女たち(1948年製作の映画)
5.0
小津安二郎「長屋紳士録」に対し清水宏「蜂の巣の子供たち」、「風の中の牝鶏」に対しこの溝口健二監督の本作は、連動している気がする。生半可では無く、巨匠たちが雄弁を奮って訴えた社会的責任に敬意を表したい。敗戦下大阪で、社会的地位も無く夫子を失い、愛人生活から路頭に迷い、夜這い同然の街娼に転落した主婦田中絹代。外地から家族を栄養失調で失い裸同然で引揚げダンサーで食い繋ぐ妹高杉早苗が、田中と梅田で再会し同居、愛人の座を奪った後、行方をくらました田中を阿倍野界隈を探索中、街娼と間違われ性病院に拘束され再び再会、検査の結果、性病感染と妊娠の事実を知る。田中は、病院の塀を乗り越え脱出、高杉を婦人保護寮に預け街頭に立つと、夫の妹角田富江が家出から不良学生に騙され転落し、街娼仲間からリンチされている場に居合わせると、更生することに目覚め、代わって制裁を受けた。田中とカムバックとなった高杉の、死力を尽くした熱演、溝口の冷徹にどん底社会を捉えたカメラアングルは史上に残る快挙!
佐藤克巳

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