「スターウォーズ」そっくりのタイトルバックからいきなり、敗戦前夜青年将校森雅之が重臣井上正夫暗殺、令嬢山口淑子がナイフで応酬それから1948年、愛国新聞、キャバレー経営の背中の刺青ヤクザ滝沢修配下の、モルヒネ中毒に喘ぎのたうち回る森。滝沢から手渡された薬を打つとサングラスがカッコいい森に変身し、ダンサーに転落した山口のお迎え、更にスポンサー加藤嘉隠匿の軍需品をトラック運搬。滝沢の鎌倉別荘へ山口と同行、ピアノを弾く山口、サングラス越しに語り出す山口に森は滝沢への反逆。キャバレーに突如現れたびっこの民衆新聞記者宇野重吉は戦友森と意気投合。ここ迄の、スリルサスペンスと鮮やかな映像感覚が群を抜く新藤兼人脚本、吉村公三郎監督の、アクション映画では「酔いどれ天使」を軽く超える衝撃作だった。脚本段階でGHQ検閲、完成後に検察のカットを受けた為か？軍部・右翼悪玉、左翼善玉が露骨な欠点はあるが、森のダンディさと山口のエキゾチックな色気、滝沢の悪辣振り、宇野の正義感と沈黙の元鬼検事清水将夫、手下三井弘次、殿山泰司等に至るキャラクターの構成が素晴らしく、木下忠司音楽も良かった。
