カトキチ

ツィゴイネルワイゼンのカトキチのレビュー・感想・評価

ツィゴイネルワイゼン(1980年製作の映画)
5.0
無限に広がる夢幻の世界に酔いしれる映画。

生と死、音楽と美術のコラージュ、夫婦、腐りかけた桃、女と男、狂気、暗闇、ロマン、すき焼きの中のこんにゃく、サラサーテ、妄想、煙、妖艶、赤い骨、白い肌、股ぐらのカニ、裸体、寄せては返す言葉、光と影、舞い散る花びら、夢……

冒頭、砂浜で数人の男に囲まれた原田芳雄がとうもろこしを喰らいながら、男を投げ飛ばし、そこから出て来た女の死体の股ぐらから赤いカニがワラワラワラと飛び出してくる。それと同時に流れるシャンシャンシャシャシャンという不穏な旋律………

映画の中に現れる数えきれないほどのイマジネーションの洪水、これらのイメージを羅列し、文法をぶっ壊した展開。破錠しそうな物語を淡々と紡ぐ緊張感に溢れた演出。和物にこだわった音楽と説明不能な世界観の美術。切り取った風景や言葉を貼り付けただけのコラージュと侮るなかれ、これは鈴木清順が持てるテクニックと感性を総動員して作り上げた夢と現実の話。
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