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インディ・ジョーンズ/最後の聖戦のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.5
 1938年、ニューヨーク大学の考古学教授で冒険好きのインディ(ハリソン・フォード)はある日、富豪ウォルター・ドノヴァン(ジュリアン・グローヴァー)のペントハウスへ連れて行かれ、責任者の失踪によって頓挫し磔にされたキリストの血を受けた聖杯の発見を依頼される。初めは断るインディだったが、行方不明になったのが父ヘンリー(ショーン・コネリー)であることを知り、それを引き受ける。ところが友人で父の旧友の考古学博物館長マーカス・ブロディ(デンホルム・エリオット)と共に父の家に向かったインディは、家が何者かによって荒らされている事に、その理由は父から手紙で送られてきた聖杯探索の調査記録であることを直感する。
インディ・ジョーンズ・シリーズ第三弾にして、一応のフィナーレとなった3作目。これまでのインディはヒロインとの冒険を軸に物語が展開していたが、今作ではインディの実の父親が登場し、親子2代の因縁が冒険の行方を左右するかのようなルーカスの『スター・ウォーズ』とも関係の深い「因果」の物語になっている。導入部分にはこれまでになかったインディの少年時代が描かれ、父と子の関係性にフォーカスする。今は亡きリヴァー・フェニックス扮するインディ少年は、砂漠の岩山の下の洞窟で、3人の悪党が宝の十字架を盗もうとしているのを目撃し、それを奪い逃亡するが、結局悪党一味に丸め込まれてしまい、彼の知恵と勇気をほめる悪党の1人からカウボーイ・ハットを受け取ることになる。冒頭から西部劇のようなゴツゴツした岩山に始まり、洞窟から馬での逃走〜列車の屋上でのアクションと息をもつかせぬような豪快なアクションの連続が素晴らしい。その列車には一両一両動物が乗っており、悪党の集団から一歩ずつ下がるごとにアクションも動いていく。彼が蛇嫌いになったきっかけはこの場面に含まれている。
インディとマーカスは、ヴェニスで父の同僚シュナイダー博士(アリソン・ドゥーディ)と合流し、古い教会を改装した図書館を訪問、父の聖杯日誌のおかげで地下墓地を発見し、聖杯のありかの手がかりをつかんだ。前作での中々始まらないアクションとミステリーの反省から、今作では脚本がテンポ良く進む。古い図書館の仕掛けに気付き、ネズミが大量に出る薄暗い洞窟を抜け、大きな墓を開けると、何者かが後から付け狙い、洞窟に火を放つ。すんでのところで下水から外へ出たインディとシュナイダーはボートで逃亡を図るのである。ここでの船のプロペラへの巻き付きは前作におけるヘリコプターのモーターに呼応する。殺し屋を一人生け捕ったインディは父がオーストリアとドイツの国境にあるブルンワルト城に閉じこめられていることを聞く。
父親との再会は随分呆気なく訪れ、再会の喜びや感慨もないままシュナイダーの裏切りから、今回も1作目同様に裏でナチスドイツが暗躍していることを知る。ここでのインディと父親とのやりとりは感動的というよりもむしろどこかコミカルで愛らしい。親子が同じ女性を抱き、これまでなかなか話すことのなかった親子の会話を楽しみ、互いが背中合わせで椅子にくくりつけられる。インディと比べてどこかコミカルで動きが鈍いショーン・コネリーだが、スピルバーグもルーカスも初代007の威光を買って彼に出演を依頼したことは明らかであろう。親から子へ冒険心は正しく伝搬し、頼もしくなった息子の姿に父親は感心するが、ヘリに襲われ絶体絶命の肝心なところで父親としての知恵を息子に伝授するのである。
しかし今作で最も驚いたのはアドルフ・ヒトラーの一瞬の登場であろう。自らのルーツを隠さないユダヤ人としてのスピルバーグが、戯画化された存在としてインディ・ジョーンズとヒトラーを一瞬だけ対峙させるのである。フォーゲル大佐を追いかけての戦車上での一騎打ちは、幼少時代の列車の上での戦いに呼応する。苦みばしった大人であるが故の簡単に落下しないしぶとさがインディにもフォーゲル大佐にも双方にあり、互いに食い下がらない戦いはやがて崖の突端まで迫ろうとしている。そこでは『激突!』へのセルフ・オマージュまでが飛び出すなど実に至れり尽くせりな活劇が繰り広げられることになる。
クライマックスの太陽の神殿での3つの難関をクリアしようと勇気を振り絞るのは、冒険心や探究心ではなく、何よりも父親への深い愛情に他ならない。シリーズ史上最も過酷な関門を突破し、いよいよ聖杯を間近に見据えたところでウォルターやシュナイダーが迫る。しかしながら聖杯伝説の正しい掟ならば、ここで本当に最後の難関が待ち構えているのである。正しい行いをする者、欲をかかない者に幸福が微笑むクライマックスは、シリーズに相応しい多幸感をもたらすのである。ナチスの焚書運動に心を痛めるシュナイダーのくだりなど、随所にナチスへの違和感を散りばめながら、父と子の因果と和解にフォーカスした物語構造、これまでの2作にはない堂々とした活劇ぶりが素晴らしい。個人的にはシリーズ4作の中で今作が一番好きである。