Kuri

ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実のKuriのレビュー・感想・評価

3.8
入江監督がオススメしているのを聞いて、川越スカラ座で鑑賞。
全編に渡って戦場での殺し合いを見せつけてくるのか、と身構えていたのですが、インタビューやニュース映像や日常生活などを挟み込みながら、ベトナム戦争とアメリカとその時代を立体的に作り上げていきます。

戦争映画ではよく目にするナパーム弾が投下される映像も、この作品では現実。
実際に家が吹き飛んで、子供が亡くなって、焼けただれた肌を晒しながら逃げていくのも現実。
アメリカ軍が追い込まれているというナレーションが載せられている画面に映るベトナム人が撃たれて血飛沫が立ち上がるのも現実。
"アジア人の命は我々の命に比べて軽いのだ"と真顔で語るアメリカ人将校の言葉も現実。

序盤で戦場についてバストアップ映像で軽口を叩いていた元兵士が、後半に引き画像でベトナム戦で手足を失っていたことを見せたり、
終戦パレードへの抗議集会への帰還兵の怒りをエンドロールに織り込んだり、と
映画的な構成も的確で飲み込みやすさに貢献しています。

ここで描かれる圧倒的な現実の前では言葉を失なって、考え込まざる得ないのです。

マイケルムーア監督以降の視点を提示する為のドキュメンタリーとは少し違う、むき出しの肌触りを感じました。
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