ShojiTaniguchi

アキラ AKIRAのShojiTaniguchiのレビュー・感想・評価

アキラ AKIRA(1988年製作の映画)
5.0
「大友克洋以前 / 以後」という言われ方もあるほどの偉人でもある漫画家の大友克洋が、自身の漫画作品をもとに製作したアニメーション映画。
自分にとっては、この映画の公開当時や漫画の連載当時に多大な影響を受けた大切な作品。

世界観やジャンルは20世紀後半に流行したサイバーパンクSFで、第三次世界大戦から数十年を経て復興しつつある日本の新首都「ネオ東京」を舞台に、健康優良不良少年である主人公達、反政府ゲリラ、軍人と軍隊、超能力の研究組織の研究員といった様々なキャラクター達の思惑が錯綜する。
未知の新型爆弾により (旧) 東京が一瞬にして壊滅する導入部分の衝撃が凄まじく、一気に引き込まれる。

アニメーション作品としての演出に関しては、歴史に残るレベルの画期的な見どころがいくつもある。
序盤における主人公達とその敵対チームのバイクチェイスとバトルにおけるテールランプの残像表現の、普遍的な斬新さ。
声優の声の収録を作画よりも先行し、それに作画を合わせるプレスコ方式をとることによって実現している、キャラクター達の演技の実在感。
アニメーションでありながら、実写映画のようにシーンごとに撮影レンズの切り替えがされているような構図の作り方。
いかにもSFといった電子的な楽曲ではなく、むしろ土着的な息遣いを感じる、芸能山城組が手掛けた劇伴。
作画枚数の膨大さとその緻密さにも驚かされるが、滑らかに動くかそうでないかといったレベルを遥かに超越した、人物達やモチーフの動きについての説得力と瑞々しさがある。
主人公達が乗りこなすバイクをはじめとするメカニックのデザインや、様々な彩度と色相が入り乱れつつシーン全体で絶妙なバランスでまとまっている色彩設計も、唯一無二といえるレベルの素晴らしさ。

大友監督は原作漫画の連載中にそれを一時中断してアニメ映画の製作に集中し、原作漫画については映画の公開後に連載再開し完結したという経緯もあって、映画版と漫画版ではおおもとの世界観や設定は同じものの、展開や結末についてはかなり違ったものになっている。
映画版を観賞するだけでも充分に価値ある体験ができながら、漫画版もあわせて読むことで、より深くこの作品の世界に浸ることができる。

日本国内にとどまらず世界中の映像製作に関わる人々に影響を及ぼしたという話も頷けるし、AKIRA以後の様々な映画やドラマにおいてそのオマージュだなと分かるシーンがあると、作品の本筋とはまた違った部分で、AKIRAに大きな影響を受けた人間のひとりとして楽しい気持ちになる。

小学生の時に初めて観賞して以来、既に何十回と観直したか分からないけれど、自分はこの先も繰り返しこの作品を観るのだろうと思う。
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