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どろろのprocerのレビュー・感想・評価

どろろ(2007年製作の映画)
3.3
 以前原作を読んで、やっぱり手塚治虫って人物はスゴイと思った作品が“どろろ”でした。初めて読んだのは以外に最近で、5年ほど前でしょうか。漫画が氾濫する現代でも、キャラクターの設定が抜群に面白く、一気に読んでしまいました。妖怪や描写もありそうでないところも興味深い部分です。

 その“どろろ”がなんと映画化!!特報をみて驚きました。なんとどろろにキャスティングされているのが柴咲コウじゃありませんか。複雑な心境でした。なんで彼女がどろろなのか・・・。原作では子供です。主人公である百鬼丸も、後半でやっとどろろの性別に気がつくのですが。

 原作が好きなだけになんとなく嫌な予感を胸に、いや、おそらく駄目だ・・・そう思いながらも、原作がダイスキなだけに観たい気持ちはとても強かったのでした。でも最近なかなか自分の時間が持てません。しかし機会は突然やってきました。急な出張で夜が開いたのです。ラッキー!もちろんレイトにかけつけました(笑)

 ネタバレをある程度避けながらも、ちょっとだけ掘り下げてレビューを書きたいと思います。現代の映画はCGを多用すればある程度なんでもできる時代です。妖怪も、百鬼丸のあれもこれも、全部出来ます。TVで主演の妻夫木君が殺陣を覚えたら、突然ヒラメキで変えられて困ったなんて話してました。ええ??ヒラメキで変えられる程度の殺陣で大丈夫か?そんな不安が襲います。それとCGに頼るととかく貧弱な映像になりがちですよね、それも心配。どろろのキャスティングも心配・・・

 しかしながらそんな予想はいい意味で裏切られました。まず、殺陣、妖怪のCGはある程度諦めがついていたので、こんなものか・・・と思うことで目を瞑れます(笑)かなりチープな妖怪たちは、もうすこし原作のデザインを考慮してほしかったですけどね。そして巷では賛否両論ある“どろろ”が柴咲コウだという点。これは自分でも意外なことに良かったのではないかと思いました。ドクターコトーでも素晴らしい演技をみせてくれた彼女ですが、今回は難しい役どころを彼女なりに精一杯“どろろ”を演じていました。少なくとも彼女は原作での“どろろ”の心情をよく理解していたのではないかと思います。キャスト頼みでヘタな恋愛ものになってしまうという危惧も、この彼女なりのどろろになりきったことで回避できたのだと思います。原作を脚色した映画版は、基本的に否定派の私なのですが、これは素直に面白いと思いました。

 映画化にあたりどの話を採用するかという点でも、物悲しくも深い鯖目編を使ってくれたのもうれしかった。でももう少し戦国の世に散っていった子供たちの悲しさを描いてほしかったです。子供たちと共に現れる尼さんの亡霊が出ないのも寂しかったなあ~。あの存在も“どろろ”の哀しい世界観を表すには大事だと思うのですが・・・。

 納得できない部分も多々ありますが、概ね映画版“どろろ”は映画として成功しているのではないかと思います。完全に色気をだしている終わり方も、まあ許してあげましょう(笑)これから観にいかれる方は、是非原作である手塚版どろろを読んで頂きたいと思います。否、映画を観てから読むほうがいいのかもしれませんね。私は以外に楽しめた“どろろ”でありました。
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