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愛を読むひとのnekosukiのネタバレレビュー・内容・結末

愛を読むひと(2008年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

作家"森瑶子”のイチオシだった"ルース・レンデル”にひと頃ハマった。作品のひとつ「ロゥフィ-ルド館の惨劇」は文盲がキーワードだったが「愛を読むひと」もそれが鍵になっている。

文盲(読み書きができない)の主人公はそのことを隠して、少年に小説の朗読を依頼する。ふたりの間に愛が芽生えるが、彼女は突然彼の前から姿を消してしまう。

時は流れ、ふたりが再会を果たしたのはアウシュビッツの捕虜収容所での犯罪を裁く裁判所だった。

映画では、文盲が知られたくない秘密として使われている。
少年と出会った頃、彼女は車掌の仕事をしていた。
真面目な仕事ぶりが認められて事務職への昇格を打診されたが文盲ゆえに引き受けることが出来ず姿を消したのだった。

裁判でも、それを明かせば罪を免れるハズだったが…

文盲という熟語は現代では死語になってしまっているが、著しく仕事の幅が狭くなるのを理解して貰えるだろうか。

例えは悪いが、偏差値が低すぎる大学を卒業したら望む一流企業への就職はままならないだろう。
他人が嫌がる3Kやブラック企業に就職するしかない現実がある。

文盲の彼女の場合はアウシュビッツの看守や車掌しか選択肢がなかったのだ。
ひとつの秘密を守りたいが為に転落して行くひとりの女性の姿を通して、人間の誇りや尊厳を問う物語。

原題は「朗読者」だが邦題は「愛を読むひと」に変えられてしまった。
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