こなつ

タレンタイム〜優しい歌のこなつのレビュー・感想・評価

タレンタイム〜優しい歌(2009年製作の映画)
4.2
2009年制作のマレーシア映画。マレーシアの女性監督ヤスミン・アフマドの最高傑作であり、51歳の若さで亡くなった彼女の長編映画では遺作となった作品。

8年の時を経て日本で初の劇場公開となった2017年に、渋谷イメージフォーラムで1回目を鑑賞。昨年、先生役で出演したマレーシアの歌手で女優のアディバ・ノールさんが亡くなった時も追悼上映がされた。

もう一度観たいとずっと思っていた作品。

かつてイギリスの植民地だった歴史を持ち、さまざまな民族・宗教・言語が入り交じって発展してきたマレーシア。

沢山の民族が暮らす街で生きる、かけがえのない青春時代を軸に、多民族国家としてのマレーシア社会を映し出している。
ドビュッシーの「月光の光」バッハの「ゴールドベルク変奏曲」などの美しいクラッシックのピアノの調べ、マレーシアのアーティストであるピート・テオのオリジナル曲など多彩な音楽が物語を彩っている。

【あらすじ】
高校生が、音楽や踊りのパフォーマンスを披露し競い合う「タレンタイム」というコンクールに向けて、それぞれが練習を積んでいる。イギリス系とマレー系の混血でムスリムの家庭に育ったムルーは、美しい歌声とピアノ演奏の弾き語り、中国系の優等生カーホウは二胡を弾き、マレー系でムスリムの転入生ハフィズは自作の歌をギターで歌う。ムルーの送り迎えをバイクですることになったインド系ヒンドゥー教で聴覚障害者のマヘシュ。いつしかムルーとマヘシュは惹かれあっていくのだが、そこには異宗教という大きな壁がある。

マレーシアの生活習慣や信仰心の強さ、亡くなった人の弔いの儀式など興味を引く場面を織り交ぜながら、家族の強い絆と愛情の深さにも心揺さぶられた。

恋する歓び、友達を想う気持ちは、民族の違いも宗教の違いも越える。様々な人々が混在する世界の現実と、それらを乗り越えていこうとする人々の葛藤。

ラスト、ギターで歌うハフィズの横に来て、ずっとわだかまりを抱えて仲良くなれなかったカーホウが二胡の伴奏で寄り添うシーンは涙が溢れた。

愛を一杯感じる感動作。
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