荒野の狼

シーザーとクレオパトラの荒野の狼のレビュー・感想・評価

シーザーとクレオパトラ(1945年製作の映画)
5.0
ノーベル文学賞作家バーナード・ショーが自身の戯曲を、自ら脚本にしたものの映画化。第二次世界大戦中の1944年に撮影され翌年公開されたカラー作品。ヴィヴィアン・リーがクレオパトラを演じているが冒頭の少女のようなクレオパトラが、後半、妖艶に大人の女王に成長していく過程の物語。
1913年生まれのリーだが登場場面の美しさはまさに少女クレオパトラそのもので、シーザーが初対面で「夢ではないか」と疑うセリフに説得力が感じられるほど。本作収録中にリーは流産を経験し精神的にも不安定になってしまう。リーは作中で純真無垢な少女から、時には神憑った侍女(フローラ・ロブスン演)が乗りうつったようかのような危うい精神の動揺までみせる見事な変貌ぶり。
本作は、基本的に明るい作品で映画もシーザーのローマへの帰還で終わり、クレオパトラとシーザーも爽やかなプラトニックな関係で二人の末路に関する暗示もない。しかし、リーの悲劇的な私生活と、クレオパトラの悲劇的な末路を知っていると、両者がオーバーラップしてしまうところはある。
なお、映画を戯曲と比較すると、戯曲のほうがセリフの分量などは多い。プロローグは1913年に書かれたものではなく、1910年に書かれたものが映画では使用されている。
荒野の狼

荒野の狼