みかんぼうや

洲崎パラダイス 赤信号のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

洲崎パラダイス 赤信号(1956年製作の映画)
3.9
「しとやかな獣」があまりにも面白すぎたので、同じく川島雄三監督の人気作をチョイス。しかもオープニングで気づいたのですが、この作品、助監督が今村昌平。今村昌平は川島雄三の一番弟子ということを初めて知りました。

内容は昭和遊郭の入り口にある小さな飲み屋に、職も無く彷徨うカップルがやってきて、そこから人生の再スタートを始める人情劇。

と書くと、なんともポジティブで温かい話に聞こえますが、内容はなかなかドロドロな話。というのも主人公の男はどんな仕事をやっても続かなそうなダメ男。女は気移りが早く目先の幸せを追っかける軽薄女。要するにこの2人の共依存と腐れ縁を描いた物語。全然爽やかな内容ではありません(一瞬、「おっ!?」という流れも見られますが)。

そんな面倒臭そうな2人ですが、その欠点が人間味溢れ、なぜか2人の関係や話の展開に引き込まれていくのですよね。そして、その2人を取り巻く周りの人間像もまた味があり、人間関係や小気味いい台詞回しが観ていてとても面白いです。

そして、結局、人間という生き物は本能的欲求には勝てず、そう簡単に変われるものではない、という皮肉めいたメッセージが、どこか「しとやかな獣」に通ずるところがあり、本作のスパイスになっています。

「しとやかな獣」の破壊力が凄すぎたので、それと比較するとインパクトはやや薄めでしたが、昭和の人情味と人間が持つ普遍的な煩悩の面白味を巧みな脚本と演出で魅せた面白い作品でした。
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