らもちー

ゆれるのらもちーのネタバレレビュー・内容・結末

ゆれる(2006年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

良かった。ラストが難しかった。橋の上での一部始終は最後の最後でタケルが8ミリビデオを見るまで分からず、8ミリビデオを見た時にタケルは兄がちえちゃんを助けようとその腕を掴んだことを思い出したみたいだったけど、ということはタケルは裁判で嘘を言ったということ?タケルの証言の嘘が意図的なのかそうでないのかがよくわからなかった。
香川照之の演技がすごいなと思った。生真面目な人間の脆さを感じた。
ミノルがタケルに言った「最初から人を疑って最後まで信じない、それが俺の知ってるタケルだよ」(うろ覚え)というセリフが良かった。


都内で写真家として成功しているタケルは母の葬儀で田舎に帰る。田舎では短気ですぐ怒鳴る父と生真面目で優しい兄が待っていた。父はガソスタを営んでいて兄はそこを継いで働いていた。そのガソスタではちえちゃんというタケルの元カノっぽい女性が働いていた。


ちえちゃんと兄は仲良さそうに働いていて、兄がちえに好意を持ってるのは明らかだった。少し嫉妬したタケルは気まぐれでちえを誘い関係を持つ。ちえの家にはタケルの写真集が全部あって、今でもタケルに思いを寄せてる様子。それを察知したタケルは軽く遊ぶだけのつもりだっただけにまずいと思ったのか早々に帰る。帰ると兄が洗濯物を畳んでいた。ここで兄とタケルは会話をするが、会話の中で兄はタケルがちえを抱いたことを察したようだった。
翌日ちえ、タケル、兄の3人は吊り橋のある渓流(?)に行く。タケルは吊り橋を渡って向こう岸で1人野生の花の撮影をする。ちえは後を追いかけ吊り橋を渡り、さらにその後ろを兄は追いかけるが、吊り橋の上で「危ないから」とちえの腰を支えていると「触らないで!」と怒鳴られ、次の瞬間ちえは吊り橋から落ちていた。自体に気づいたタケルは橋に向かい怯える兄を支えながら警察に連絡。ちえは死んでしまった。事故として片付けられそうだったが、この事件がきっかけで兄はタガが外れてしまったのか、職場でのクレーム客に過激に手を挙げてしまう。この件で警察にしょっぴかれた際に吊り橋の件についても自分が突き落としたと自白する。事件は事故ではなく殺人に切りかえられ、兄の裁判が始まる。兄はちえを突き飛ばしたのは事実だが突き落としてはいないと主張し無罪になりそうな流れだった。タケルは兄と面会しそこで兄の歪んだ一面、タケルに対する劣等感などを知ることになる。その劣等感というのは都会で自由に働きその上高給取りで女にモテる柔軟なタケルと、田舎で単調な仕事の毎日を送り家では父の小言に付き合わされさらに顔がかっよくないから女性にモテないという劣等感。何もかも恵まれ意中の女性さえも簡単に奪ってゆくタケルへの嫉妬。そんな兄に面会室で揺さぶられ、それまで兄を庇っていたタケルはある決意をする。


タケルは証言台に経ち、吊り橋の上で兄はちえちゃんを故意に突き落とした、兄は嘘をついたと証言する。弁護士は叔父のおじさんだったが、何度もタケルに吊り橋での出来事を確認し何も見てないと言われていたのにここに来て証言を変えられ激昴する。兄はどこかほっとしたような顔でその証言を聞いている。


7年後、タケルは相変わらず写真家としては上手くいってるようだった。そこへ父のガソスタの従業員が来て兄が出所することを伝える。家族とは縁を切ったつもりでいたタケルだったが帰宅して8ミリフィルムを見て、かつてはひょうきんで愛情のあった父や自分を助けてくれる兄の姿を見て号泣。さらにその映像を見ていて、吊り橋の上で兄はちえちゃんを助けようと手を伸ばし掴んだことを思い出した。その証拠に兄の腕には爪の跡が線上に残っていた。切っても切れない関係が家族…タケルは車を走らせ実家のある田舎へ、そして兄の姿を見つけ追いかけ「一緒に帰ろう」と声をかけるが兄はそれを静かに微笑んでいるだけ。タケルに残ったものは持たなくても良かったはずの罪悪感。兄が手に入れたのは自由だったのかもしれない。
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