Narmy

ツレがうつになりまして。のNarmyのレビュー・感想・評価

ツレがうつになりまして。(2011年製作の映画)
4.7
暗く重くなりがちな題材を扱っているはずなのに、終始ほんわか温かな空気に包まれていて、いつまでもどこまでも2人の日常を観ていたいと思えるほどの心地よさを感じながらのあっという間の鑑賞。
決して楽観的に描いているわけではないし、深刻さもしっかりと伝わってくるんだけど、気持ちが滅入ることはなく不思議と真っ直ぐに受け止められる。
それはもちろんストーリーもよかったんだけど、何より主演2人の持つオーラが全体のトーンを希望の持てる未来へと押し上げている。

外資系企業のサポートセンターでクレーム担当をしている「ツレ」こと幹男は真面目で几帳面な性格。
対して妻ハルさんは漫画家で、ネガティブではあるけどのんびり大らかな性格。
2人は縁側のある昔懐かしい古民家でイグアナのイグと共に暮らしている。
何にも変わらないいつもと同じ日常を過ごしていたはずなのに、見えないところでじわじわとツレの心に変化がみられ、それが身体に行動に現れるようになっていく、、

全体としては2人で過ごす日常が可愛くてふんわりしていて、その掛け合いも自然で癒される。
幸福な毎日を送っていて仕事の気分転換も出来ていそうなんだけど、それでも何かのかけ違いで鬱病を発症してしまう。

観ている間、何度も静かな涙が流れた。
お互いを思いやる気持ち、支えてくれる周りの気持ち、本人の迷惑をかけてしまうと思ってしまう気持ちなどなど、気持ちが溢れ出る度に、何度も涙がつたう。

自分のことをネガティブだと言っていたハルさんもツレの病気がきっかけで、自分の夢に対して積極的になりポジティブな心を持ち始める。
2人だけで支え合うという狭い空間から、実はもっとたくさんの人に支えられているということに気づいた時、2人はより強い絆で結ばれ安心感を得たのかも。

鬱病はなんとなく、自分自身の問題で治療していかなければならないような気がしてしまうけど、鬱病こそ周りの理解と周りからの愛情がどれだけ必要かということが自然に心に落ちる。
どんな病気かは知っていると思っていたんだけど、正確には理解していなかったのか、、
知っているといないとでは全然心構えが変わってくる。
忙しい毎日や消化しきれない思いに息ができなくなる前に、ゆっくり休んでそして観てもらいたい作品。
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