カトキチ

コタンの口笛のカトキチのレビュー・感想・評価

コタンの口笛(1959年製作の映画)
5.0
アイヌの差別問題という非常に描きにくい題材だが、様々な視点でそれを物語る橋本忍の脚本が見事。善悪をバランス良く配置したことで、結果的に人間そのものを丸ごと描いていく。フィクショナルな脚本なので、成瀬巳喜男の中でも一番感情を爆発させた作品に仕上がった。

シネスコを生かした映像作りは「これぞ映画」というものを感じさせ、“だだっ広い大地に立つ少年”や“川縁のアイヌの家”など一枚の絵として美しい。それだけでなく、スクリーンいっぱいにコタンの生活の匂いを感じさせる演出はさすがの一言。

観ていてつらいがヤルセナキオにならなかったのは暖かさを少しだけ残していたからだろう。
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