netfilms

君とボクの虹色の世界のnetfilmsのレビュー・感想・評価

君とボクの虹色の世界(2005年製作の映画)
4.0
 クリスティーン(ミランダ・ジュライ)はピンク色の壁が印象的な奇抜で狭苦しい部屋で、モニターTVや拡声器を駆使しながら、精一杯のパフォーマンスを記録する。彼女はアーティストを夢見ながら、高齢者向けタクシーの運転手をして生計を立てている。ある日、常連客のマイケル(ヘクター・エリアス)と一緒にショッピングモールの靴売り場を訪れた彼女は、店員のリチャード(ジョン・ホークス)に恋をする。彼はお客様を決して甘やかさず、靴のサイズがフィットしているか最後に確認する冷静な店員だった。リチャードは最近離婚したばかりで、恋に臆病になっていた。リチャードの息子ロビー(ブランドン・ラトクリフ)とピーター(マイルス・トンプソン)は、SEXチャットで遊んでいるうちに、ある女らしきHNと意気投合。そしてロビーは相手の女性から今度会いましょうと誘われる。リチャードの隣家に住むしっかり者の小学生シルヴィーは、嫁入り道具をコレクションしている。ある日コレクションをピーターにみられ、未来の夫と娘のために集めていると語る。

 不器用な父親と、不器用な父親に育てられた息子たち(黒人女性との間に生まれた子)、靴売り場で恋に落ちるアーティスト崩れの女、レズビアンの恋を覗き見るロリコン気味の男性アンドリュー(ブラッド・ヘンケ)、徹底して母性を求める小学生、70歳にしてようやく愛する人を見つけた男性ら、 同じ街に住む不器用な男女にのみ焦点を絞った今作は登場人物たちの全てが愛おしい。愛おしくて堪らない。誰かを思う男も女もその思いは常に一方通行で、求めている結果には簡単に辿り着けない。車の上の金魚、オイルで発火した左手、弟が代行するチャット、ピンク色の新しい靴、タオルの上のキャンディ、地面に並べた嫁入り道具一式。一見するとてんでばらばらな道具立ての妙が、男と女の間のディス・コミュニケーションに静かに火を着ける。不器用な文字でフロント・ガラスに書いた「F⚪︎CK」の文字、ピンク色のシューズの両側に描かれた「Me」と「You」の文字は一生離れたままで揺蕩う。不器用な男と女は不器用であるがゆえに純粋で、病的なまでに愛おしい。それぞれの愛したい・愛されたいという想いが交差するクライマックスの展開にうっかり涙ぐむ。
netfilms

netfilms