ナツミオ

ゼロの焦点のナツミオのレビュー・感想・評価

ゼロの焦点(1961年製作の映画)
3.7
WOWOW録画鑑賞
【没後30年 松本清張原作特集】

「雲たれて ひとりたけれる 荒波を かなしと思へり 能登の初旅」

初鑑賞。良かった‼️
太平洋戦争後の時代の傷跡を背景に、必死に生きようとした女たちの哀しみを描いたサスペンス、ミステリーの名作。

新婚早々出張に出掛けて消息不明となった夫。その裏には何が?
松本清張の代表作の一つを野村芳太郎監督が3大女優の競演で映画化。2009年、2度目の映画化がされた。また多数TVドラマ化されている。

第12回ブルーリボン賞助演女優賞(高千穂ひづる)受賞

英語題名『Zero Focus』

1961年日本作品モノクロ
監督 野村芳太郎
原作 松本清張
脚本 橋本忍 山田洋次
音楽 芥川也寸志
撮影 川又昻
出演 久我美子 高千穂ひづる 有馬稲子 南原宏治 西村晃 加藤嘉 穂積隆信 

(WOWOW番組内容より)
結婚してわずか1週間の夫、広告会社に勤める鵜原憲一(南原宏治)は、金沢へ出張旅行に行くと言って家から旅立ったきり、そのまま行方不明となってしまい、憲一の新妻の禎子(久我美子)は思わず途方に暮れる。会社の同僚の調査に同行して金沢まで赴いた禎子は、夫の知り合いを訪ね歩くが、誰も憲一の失踪について心当たりがないと言うばかり。ところがやがて、賢一の兄・宗太郎(西村晃)が何者かに毒殺されるという事件が発生し、事態は思いがけない方向に向かって発展していく……。

原作は松本清張の長編推理小説。北陸地方を舞台に、太平洋戦争直後に端を発する時代の傷痕が生んだ連続殺人事件を描く。

本映画は『張込み』(1958)以来の橋本忍と野村芳太郎のコンビによる作品となり、脚本には山田洋次も参加した。山田によれば、本映画のシナリオ作りは難航し、のちに映画『砂の器』(1974)のアイデアを生んだ橋本も音をあげたことがあったという。
能登金剛・ヤセの断崖をクライマックスの舞台とし、主人公と犯人が、直接相まみえる場面が設定されるなどのアレンジが加えられ、松本清張原作映画の中でも著名な作品のひとつとなった。
(Wikipediaより)

既視感ある断崖でのクライマックスは、その後のドラマ(特に2時間ドラマ)などでお馴染みのシチュエーションは、本作の影響力が伺える。

北陸地方の寒々とした日本海の荒波、寒村、雪の風景、そして断崖など、風景の描写がいい。
主人公、新妻の禎子が行方不明になった夫・憲一を探すため北陸に赴く。夫の過去、経歴など多くを知らずに見合い結婚した彼女の不安と自身のナレーションは、観るものに彼女と同じ視点で不安を共有。
手がかりが少ない中、夫の過去がわかり、少しづつ事件の核心に近付いていく…

禎子の回想シーンでいきなり、新婚旅行での夫・憲一との濃厚なキスシーンや入浴シーンなど差し込まれ、新妻の恥じらい描写も新鮮‼️禎子役、久我美子が綺麗。
OL姿の方がより美しさが際立っている‼️

そして、高千穂ひづる演じる室田佐知子、有馬稲子の田沼久子。この3人の演技競演を楽しんだ。
後半の主役を食う勢いの高千穂は、ブルーリボン賞助演女優賞受賞。

内縁の夫・曽根益三郎の帰りを待ち侘びる女・田沼久子役、有馬稲子の美しさも光る。

禎子と佐知子。
断崖での対峙

佐知子と久子。
橋の上での和解と共感、その後の…

最初の歌碑は、
舞台となった能登金剛の巌門には、本作にちなんだ原作者直筆の文字が刻まれている。

野村芳太郎監督作品は、『砂の器』のみ過去視聴も未レビュー。
こちらも本作と同じ脚本、音楽、撮影スタッフで久しぶりに観たくなった‼️



忘備録(ネタバレなし)
キャスト
鵜原禎子:久我美子
室田佐知子:高千穂ひづる
田沼久子:有馬稲子
鵜原憲一:南原宏治
鵜原宗太郎:西村晃
室田儀作:加藤嘉
本多:穂積隆信
青木:野々浩介
佐伯(仲人):十朱久雄
禎子の母:高橋とよ
宗太郎の妻:沢村貞子
葉山警部補:磯野秋雄
金沢署捜査主任:織田政雄
北村警部補:永井達郎
立川の大隅のおばさん:桜むつ子
博報社の重役:北龍二 → 本編では佐々木孝丸がキャストされている。
鵜原の上司:稲川善一

以下、Wikipediaより
本映画公開後、能登金剛周辺地域で投身自殺が急増し、多い年には18人の自殺者が確認されるにいたった。当時19歳の女性が、「『ゼロの焦点』の舞台となった能登金剛で死ぬ」との遺書を残して自殺した事件を契機に、女性の霊を慰め、更なる自殺者が出ないようにと、能登金剛の巌門には、本作にちなんだ歌碑が立てられた。歌碑には「雲たれて ひとりたけれる 荒波を かなしと思へり 能登の初旅」と、原作者直筆の文字が刻まれている。

作品の背景
事件の背景に、連合国軍占領下の日本で、アメリカ軍将兵(小説中では「GI」とも表記)相手に売春行為をしていた女性(小説中では「パンパン」とも表記)らの存在がある。彼女らが自らの忌まわしい過去を隠そうとする必死の感情が、作品中で重要な意味を持ってくる。原作が書かれた当時は現在よりも女性の社会的地位が低く、過去に少しでも汚点があると偏見にさらされて就職に差し障るばかりでなく、婚約を破棄されたり一方的に離婚させられたりしてしまうケースが少なくなかった時代である。

小説の時代設定は日本の降伏から13年後(=1958年)とされている。女性が相手のことをよく知らないまま見合い結婚することは、当時はありふれていた。本作発表当時の恋愛結婚の割合は4割に満たず、見合い結婚との構成比が逆転するのは、1960年代半ばを過ぎてからのことである。
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