ナツミオ

ラストエンペラーのナツミオのレビュー・感想・評価

ラストエンペラー(1987年製作の映画)
4.0
WOWOW on demand鑑賞

 “理想国家の幻影”

数回目の鑑賞。
過去未レビュー、再鑑賞・再投稿。
過去イイネ!頂いた皆さんありがとうございます♪♪♪

配信が今月末なので駆け込み鑑賞♪♪♪
過去スコア3.8よりアップ

鬼才ベルナルド・ベルトルッチ監督が清朝最後の皇帝である溥儀(ふぎ)の生涯を、壮大かつ華麗に再現した歴史大河ドラマの超大作。第60回アカデミー賞で作品賞など大量9部門を制覇した名作。

受賞歴
・第60回(1987)アカデミー賞9部門受賞
(作品・監督・脚色・撮影・美術フェルナンド・スカルフィオッティ、ブルーノ・セサリ・編集ガブリエラ・クリスティアーニ・音響・作曲坂本龍一、デヴィッド・バーン、ソン・スー・衣装デザイン賞ジェームズ・アシュソン)
・第45回ゴールデン・グローブ賞4部門受賞。
(ドラマ部門作品・監督・脚本・作曲賞)

原題 『The Last Emperor』
中題 『末代皇帝』
伊題 『L'ultimo imperatore』

1987年伊・英・中・仏・米作品163分
監督・脚本 ベルナルド・ベルトルッチ
製作 ジェレミー・トーマス
脚本 マーク・ペプロー
撮影 ヴィットリオ・ストラーロ
音楽 坂本龍一 デヴィッド・バーン ソン・スー
出演 ジョン・ローン ジョアン・チェン
ピーター・オトゥール 坂本龍一 マギー・ハン ケーリー・ヒロユキ・タガワ 
高松英郎 立花ハジメ ヴィクター・ウォン 

(WOWOW番組内容より)
第2次世界大戦が終結してから5年後、中国のハルビンでひとりの男性が自殺を試みる。1908年、まだ3歳だった溥儀は西太后によって北京の紫禁城に迎えられ、皇帝に任命される。だが3年後、辛亥革命を機に皇帝を退位させられてしまい、城内で監禁されるように。やがてクーデターで城を追われた溥儀(ローン)は日本軍の甘粕大尉(坂本)の手引きで天津に逃亡し、そこで満州国皇帝の座に収まるが、その後も彼の人生も波乱に富むものだった……。

(WOWOW解説より)
「戦場のメリークリスマス」や北野武監督「BROTHER」などの英国の名製作者ジェレミー・トーマスのもと、イタリア、英国、中国、ハリウッド(米国)の映画人たちが総力を結集し、西欧が参加した作品としては初の本格中国本土ロケ(紫禁城ほか)を実現したのも当時話題になった。その濃密かつ絢爛たる映像美は圧巻だ。後年、初公開版で使われていない場面(溥儀の時代の強制収容所の描写など)を加えて再編集した〔完全版〕も公開された。音楽を担当してアカデミー賞で作曲賞に輝いた坂本龍一は軍人役で出演もしている。

激動の時代に生きた中国の最後の皇帝溥儀の生涯を描く歴史大河ドラマ。

溥儀の自伝『わが半生』を原作に、ベルナルド・ベルトルッチが監督、脚本を兼任した。メインキャストである溥儀の青年時以降を演じたのは、香港生まれの中国系アメリカ人俳優のジョン・ローン。
ローンは本作で大ブレイク‼️
日本の洋酒CMにも出てましたネ〜

家庭教師ジョンストン役ピーター・オトゥールは出番は短いが渋い演技で場が引き締まる感じ♪♪♪

そして何より、
撮影のヴィットリオ・ストラーロによる豪華絢爛な紫禁城での溥儀の即位式の極彩色の色あいがインパクト大♪♪♪

もちろん、音楽は坂本龍一他。
尚、坂本は短い出番ながら、”甘粕大尉“という癖のある実在の人物役でも出演。

史実と異なる描写も一部含まれているが、大筋は満洲国皇帝、愛新覚羅溥儀(あいしんかくらふぎ)が激動の歴史のなか波乱の人生を送る姿を描く。

昔から数回目の鑑賞だが、本作以外にも色々と似たドラマや関連作品も観た記憶が蘇る。

“東洋の宝石”や”男装の麗人“そして“東洋のマタ・ハリ”とも色々な渾名がある“川島芳子”は本作ではマギー・ハンが演じるが、なんとなく山田邦子に似てるなぁ〜って、調べたら昔観たドラマで山田邦子が演じていたのを思い出した。

この「川島芳子」は色々な映画・舞台・ドラマに登場する人気キャラクターでもあり、主役としての作品も多数あるよう。

余談ながら昔観たドラマは、
 『さよなら李香蘭』(1989年、フジテレビ、演:山田邦子)だったようだ。
このタイトルの”李香蘭“は、当時、満映の有名女優であり、実は日本人の山口淑子の別名だった彼女の半生も激動の時代に翻弄された半生だった。

坂本龍一演じる、甘粕大尉も関東軍特務機関員ながら、その後、満洲映画協会(満映)理事長を務めたことは本作では割愛されていたが、この人もこの時代では欠かせぬ人物だった。記憶では強烈なインパクトがあったが実際の登場時間は少なめ。

こちらの人物もかなり多くの作品に登場する実在の人物。

そして、前半と後半に登場する戦犯収容所所長役、英若誠(イン・ルオ・チェン)が今回非常に印象深い。
溥儀にとって、市民生活を迎えられる様に指導してくれた所長が、文革の犠牲になる矛盾…

久し振りの鑑賞だったが、色褪せない名作でした♪♪♪





↓ 以下ネタバレあり

【忘備録】
(年表・映画内エピソード含む)
<1906年2月7日>
・醇親王載灃の子として直隷省順天府(現:北京市)に生まれる。

<1908年>
・溥儀(リチャード・ヴゥ)2歳。
・西太后による溥儀に対する清朝皇帝指名と崩御。
・第12代清朝皇帝(宣統帝)に即位。

<1912年>
・溥儀6歳。
・辛亥革命により退位。

<1917年>
・溥儀11歳。
・張勲復辟により清朝皇帝に復位するも、12日後に再び退位。

<1919年>
・溥儀(ウー・タオ)13歳。
・イギリス人のレジナルド・ジョンストン(オトゥール)を帝師(家庭教師)として招聘。

・学生のデモ(五四運動)で物々しい北京市街を経て、ジョンストンは紫禁城へ赴く。

・ジョンストンから家庭教師として、勉強だけでなく城外の知識や常識を与え、彼にとって信頼できる師となる。

<1921年>
・溥儀15歳。
・溥儀の実母が逝去。(アヘンを飲み込んでの自殺)

・お妃候補たちから太妃たちによって
17歳の婉容が皇后
12歳の文繡が淑妃(第2皇妃、側室)
に選ばれる。

<1922年>
・溥儀16歳。
・正妻の婉容(ジョアン・チェン)、側室の文繡(ヴィヴィアン・ウー)と結婚。

<1924年>
・溥儀(ジョン・ローン)18歳
・溥儀を対象としたクーデター(北京政変)により紫禁城から退去。ジョンストンが帝師を退任。溥儀ら一族は1時間以内の退去を命じられる。

・“北京政変”により日本への接近が決定的となった。

<1925年>
・イギリスやオランダ公使館へ庇護を要請するものの国際問題になることを恐れ、受け入れず、結局手を差し伸べたのは、大日本帝国のみだった。
・天津日本租界内張園に移転。
日本の庇護下、天津での生活を始める。

・年末、ジョンストンは天津港よりP&O汽船でイギリスに帰国。
帰国直前に溥儀を訪問し、ジョンストンの献身に深く感謝した溥儀は、この際にジョンストンに記念品を下賜している。
作品内では、扇子を渡している。

<1927年>
・溥儀21歳。
・天津での生活は、軍閥との交渉はあったものの、総じて楽しいものだった。
・文繡は紫禁城の外では(社会的に)妻として認められず、孤独な思いから離婚を望む。
・上海クーデター(蔣介石による上海制圧)発生。
・帝国陸軍大尉・甘粕正彦(坂本)の急接近。
・男装の麗人、「東洋の宝石」(eastern jewel)こと川島芳子(マギー・ハン)が現れる。他の渾名”東洋のマタ・ハリ“
婉容の護衛、溥儀の遠縁でありあらゆる情報に通じていた。そして芳子は、婉容にアヘンを勧める。

<1931年>
・溥儀25歳。
・満洲事変
・文繡と離婚。
・満洲事変勃発後、大日本帝国陸軍からの満洲国元首への就任要請を受諾し、日本軍の手引きで天津を脱出、満洲へ移る。

<1932年>
・溥儀26歳。
・満洲国の建国に伴い満洲国執政に就任。

<1934年>
・溥儀28歳。
・満洲国皇帝(康徳帝)に即位。

<1935年>
・溥儀29歳。
・初の外国訪問として日本を公式訪問。

<1937年>
・溥儀31歳。
・譚玉齢を側室とする。

<1940年>
・溥儀34歳。
・日本を再び公式訪問、最後の公式外国訪問となる。

<1942年>
・溥儀36歳。
・側室の譚玉齢が死去。

<1943年>
・溥儀37歳。
・李玉琴を側室とする。

<1945年8月15日>
・溥儀39歳。
・日本の敗戦により、満洲国は滅亡。
再び皇帝を退位。甘粕の自決。
・溥儀は日本への亡命を図るが侵攻してきたソ連軍に捕まる。
婉容と再会するが、アヘンの中毒症状で変わり果てた姿に。

<1946年>
・溥儀40歳。
・極東国際軍事裁判にソ連の証人として出廷証言、正妻の婉容死去。

<1950年>
・溥儀44歳。
・ハルビン。
・5年間にわたるソビエト連邦での抑留を解かれ、中華人民共和国に送還。

・自殺を図った溥儀(ローン)は一命を取り留め、中華人民共和国の戦犯として遼寧省撫順戦犯管理所の政治犯収容所(撫順戦犯管理所)に送られる。

撫順戦犯管理所
・ハルビンで溥儀を助けた人物は、戦犯収容所所長(英若誠)本人だった。
・家庭教師だったレジナルド・ジョンストン(オトゥール)が記した『紫禁城の黄昏』を元に尋問開始。

<1950年代>
・戦犯たちに対し”中国共産党視点“での歴史映画が放映される。

“大日本帝国は満洲で侵略の足場を固める”
”上海での無差別爆撃“
“南京での20万人以上の虐殺”
”真珠湾奇襲“
“満洲における細菌戦のための人体実験”
”アヘン生産“

・満洲国皇帝として日本の傀儡(かいらい)に甘んじる自分の映像が流れ溥儀は思わず立ち上がる。

・溥儀は、共産党政府が用意したあらゆる「告白」に一転して署名を行う。

<1959年>
・溥儀53歳。
・特赦令第一号により、収容所を模範囚として釈放される。

<1960年2月〜1961年3月>
・中国共産党の周恩来の指示により、一般市民にとしての生活に慣れるための「労働鍛錬」として中国科学院植物研究所の北京植物園に庭師として勤務。

・政協第4期文史研究委員会専門委員に就任。

<1962年>
・溥儀56歳。
・李淑賢と再婚。

<1964年>
・溥儀58歳。
・満洲民族の代表として政協全国委員に選出。

<1967年>
・溥儀61歳。
・文化大革命のさなか。
・紅衛兵のデモ中に罪人として引き回されているかつての収容所所長の姿を見つけ、庇おうとするが徒労に終る。

・博物館として一般公開されている紫禁城を訪れる。守衛の子供にコオロギの壷を手渡す。

・10月17日一市民として北京で死去。61歳。

<1987年現代(公開年)>
・歴史を直接に知らない国内外から訪れた大勢の観光客たちが紫禁城を訪れ、20年前に亡くなった過去の皇帝溥儀の玉座を眺める。


【サントラ】
Wikipediaより
(解説)
・作曲は坂本龍一、トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーン、中国人作曲家の蘇聡(スー・ツォン)。

・編曲は上野耕路と野見祐二、フェアライト・プログラミングにハンス・ジマー、指揮はギャヴィン・ライトが行っている。

・本作品でアカデミー賞作曲賞(坂本は日本人として初の受賞者)、英国アカデミー賞、ロサンジェルス映画批評家協会賞、ゴールデングローブ賞、グラミー賞映画・テレビ音楽賞を受賞した。

(収録曲)
1. 戴冠式
First Coronation
作曲:坂本龍一

2. オープン・ザ・ドア
Open the Door
作曲:坂本龍一

3. ホエア・イズ・アーモ
Where Is Armo?
作曲:坂本龍一

4. ピッキング・アップ・ブライズ
Picking Up Brides
作曲:坂本龍一

5. ラストエンペラー テーマ・バリエーション1
The Last Emperor - Theme Variation 1
作曲:坂本龍一

6. レイン
Rain (I Want a Divorce)
作曲:坂本龍一
溥儀との別れを決意した第二皇妃がドアに置手紙を差し込んで、階段を走り降り、雨の降る中を歩いて去るシーンで流れる。
この曲で、映画を試写したイタリア人スタッフらが「ペルフェ(最高)!」と熱狂、ベルトルッチ監督も一番好きな曲とのこと。後に坂本のアルバム『プレイング・ジ・オーケストラ』でフルオーケストラ、『1996』でトリオ編成、『/04』でピアノ四重奏によるセルフカバーを行っている。

7. ベイビー
The Baby (Was Born Dead)
作曲:坂本龍一

8. ラストエンペラー テーマ・バリエーション2
The Last Emperor - Theme Variation 2
作曲:坂本龍一

9. ラストエンペラー テーマ
The Last Emperor - Theme
作曲:坂本龍一
映画のエンドロールで使用された曲。
坂本は、劇中に使用されているフレーズをエンドロールに盛り込む手法をこの映画から取り入れている。
矢野顕子は、この曲が冨田勲作曲の「新日本紀行」のテーマと似ていることを指摘しているが、本人は「よく覚えてなくて」とインタビューで漏らしている。どちらも近代和声に東洋音階の旋律をのせる作り故の類似であろう。この曲は非常に転調が多い。
なお、坂本のアルバム『プレイング・ジ・オーケストラ』でフルオーケストラ、『1996』でトリオ編成、『/05』でピアノソロによるセルフカバーが行われている。1987年10月18日、坂本がパーソナリティを務めていた、FM東京「不思議の国の龍一」では、オーケストレーションのみのテイク(低い金属音が省略されたバージョン)が放送された。

10. メイン・タイトル・テーマ
Main Title Theme (The Last Emperor)
作曲:デヴィッド・バーン

11. ピッキング・ア・ブライド
Picking a Bride
作曲:デヴィッド・バーン

12. ベッド
Bed
作曲:デヴィッド・バーン

13. 風、雨、水
Wind, Rain and Water
作曲:デヴィッド・バーン

14. ペーパー・エンペラー
Paper Emperor
作曲:デヴィッド・バーン
物語が満洲国に移ってからバーンの作で唯一使われている曲。宮中晩餐会が始まる前のシーンでひっそり鳴っている。

15. ランチ
Lunch
作曲:蘇聡

16. レッド・ガード
Red Guard
作曲:Traditional

17. 皇帝円舞曲
The Emperor's Waltz
作曲:ヨハン・シュトラウス
指揮はヘルベルト・フォン・カラヤン。

18. レッド・ガード・ダンス
The Red Guard Dance
作曲:Traditional


(キャスト)
・愛新覚羅溥儀 Pu Yi (adult)
- (演)ジョン・ローン(尊龍)

・婉容 Wan Jung
- (演)ジョアン・チェン (陳 冲)

・レジナルド・ジョンストン  
Reginald Johnston (R.J.)
- (演)ピーター・オトゥール

・甘粕正彦 Amakasu
- (演)坂本龍一

・戦犯収容所所長 The Governor
- (演)英若誠(えい・じゃくせい、イン・ルオ・チェン)

・陳宝琛(溥儀の教育係) 
Chen Pao Shen
- (演)ヴィクター・ウォン(黃自強)

・西太后 Tzu Hsui
- (演)リサ・ルー(盧燕)

・川島芳子 Eastern Jewel
- (演)マギー・ハン Maggie Han

・戦犯収容所尋問官 Interrogator
- (演)リック・ヤング Ric Young

・大李(溥儀の召使)  Big Li
- (演)デニス・ダン Denis Dun

・溥儀(3歳) Pu Yi (3years)
- (演)リチャード・ヴゥ 

・溥儀(8歳) Pu Yi (8years)
- (演)タイジャー・ツゥウ

・溥儀(15歳) Pu Yi (15years)
- (演)ウー・タオ

・張謙和 Chang
- (演)ケイリー=ヒロユキ・タガワ
Cary-Hiroyuki Tagawa

・アーモ(溥儀の乳母) ArMo
- (演)イェード・ゴー

・文繡(第二皇妃)
- (演)ヴィヴィアン・ウー(鄔君梅)

・吉岡安直 Yoshioka
- (演)池田史比古 

・溥傑
- (演)ファン・グァン

・溥傑(老人)
- (演)林一夫

・溥傑(7歳)
- (演)ヘンリー・キィ

・瓜爾佳氏(溥儀の母)
- (演)リャン・ドン

・隆裕太后 (光緒帝の皇后)
- (演)スーン・ファイケイ

・張景恵
- (演)チェン・シュ

・文繡(13歳)
- (演)ウー・ジュン

・日本人医師
- (演)生田朗

・大足(宦官)
- (演)チャン・リャンピン

・猫背(宦官)
- (演)フアン・ウェンジェ

・菱刈隆 General Hishikari
- (演)高松英郎

・日本人通訳 Japanese Translator
- (演)立花ハジメ

・溥傑(14歳)
- (演)アルヴィン・ライリーIII

・醇親王(溥儀の父)
- (演)バシル・パオ

・太妃 
- (演)シャオ・ルーチェン
- (演)リー・ユー(李玉)
- (演)リー・グアンリー 

・内務府大臣 
- (演)ジャン・シーレン

・馮玉祥軍の将官 
- (演)スー・トンルイ

・満洲国経済部大臣
- (演)リー・フーシェン

・嵯峨浩(さが ひろ)
- (演)チェン・シューヤン

・鄭孝胥
- (演)ユー・シホン

・袁世凱(えん せいがい、ユエン・シーカイ)
- (演)ヤン・パオツォン

・近衛兵隊長
- (演)陳凱歌(チェン・カイコー)
カメオ出演

・昭和天皇
- (演)チャン・リンムー
公開時カット
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