Mikiyoshi1986

素敵な歌と舟はゆくのMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

素敵な歌と舟はゆく(1999年製作の映画)
4.1
「月曜日に乾杯!」で知名度をググンと上げたオタール・イオセリアーニ監督のその前作に当たる傑作群像劇。
彼の作品はそんなに観ている方ではないんですが、個人的には本作が一番のお気に入り。

所謂グランドホテル方式に則った群像劇であり、パリを舞台に多種多様の人々が入り交じり、それぞれが少しずつ作用し合いながらもストーリーが流動的に目眩く展開していく様はこの上なく美しいです。
老いも若いも、男も女も、金持ちも貧乏も、善人も悪人も、皆がそれぞれの生活を送り、数珠繋ぎに巡り巡る1日の風景が丁寧に綴られます。

それは劇中にも登場するように、弧を描きながら回り続ける鉄道模型そのもののよう。
しかし、その輪のような連なりは時の流れと作用して螺旋状に永続しており、人生の重なりとその尊さにふと気づかされるという大変味わい深い作品になっています。
特に鉄道模型の無限とも思える堂々巡りから解き放たれ、邦題にもあるように舟が悠々とゆく姿にはとてつもないカタルシスを感じちゃう。

そう思うと90年代って「ショートカッツ」に「パルプフィクション」に「マグノリア」などなど、グランドホテル方式がかなりトレンドだったなぁと。
Mikiyoshi1986

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