暴力と破滅の運び手

西部の王者の暴力と破滅の運び手のレビュー・感想・評価

西部の王者(1944年製作の映画)
4.5
ウェルマンが「アメリカ西部劇」への手向けとして放った弔花としてしか観れない映画だった。

何故こんなボロ西部にディズニーの女みたいなクソ馬鹿ドレスを着た女が…とかインディアンの族長の娘が白人学校を…とか色々な箇所に違和感を仕込んでおきながら話としてはアメリカvsインディアンというお約束をなぞっていく。
なんて「西部劇」!と思うくらいのお約束ぶり。
しかし峡谷の戦いになると唐突に「西部劇」であることをかなぐり捨て血も凍るような戦場を描きはじめる。音楽は消え、馬に乗ったまま人々がもつれあい、サーベルを振りかざし、殺し合いとしか形容できない暴力がたっぷり数分は映し出される。そのあと英雄は東部に行って「見世物小屋のガンマン」になり、最後は「西部を東部に持ってくる」西部劇の巡業小屋をひらき世界を巡る。英雄は老いて、舞台を去る。
これを涙なしで観ろというのは無理。これを弔花と言わずして何と言うのか。そしてなぜか2013年にもなってそれをヴァービンスキーが受け取ったのだと思うと胸が熱くなる。