暴力と破滅の運び手

鉄腕ジムの暴力と破滅の運び手のレビュー・感想・評価

鉄腕ジム(1942年製作の映画)
4.5
1888年。銀行員を勤めていたアイルランド系アメリカ人のジェームズ・“ジム”・コービックは、賭博ボクシングで一緒に収監された銀行の役員に見出され、紳士クラブの無料会員となる。出資者は銀鉱のオーナーとその娘だったが、その二人をはじめクラブ会員たちはジムの野心的な態度が気に入らず(なんせエロール・フリンだし)、前王者との練習試合でジムが負ける方に駆けるが、ジムはあっさり勝ってしまう。娘と喧嘩したことをきっかけにプロボクサーとして生計を立てるようになったジムは連戦連勝を繰り返し、ついには娘による匿名の出資によって現王者との試合が実現する。
エロール・フリンの飄々とした感じがスポーツものというより、今でいう異世界もののような感じを与える。ラオール・ウォルシュはスクリューボール・コメディの書法でスポーツものを撮ってしまった。とはいえ試合自体には見ごたえがあるし、何より素晴らしかったのは脇役や群衆の活写であろう。ジムの実家(のあるアイリッシュタウン)では家庭内の喧嘩が賭けボクシングになる有様であり、兄たちは試合中ずっとわけのわからない素振りをしている。観客たちも素晴らしく、試合を邪魔する保安官は海に突き落とし、試合とあらば高貴な女たちもわんさか見届けに来るのである。実に眼に楽しい映画だった。