トムヤムクン

処刑の丘のトムヤムクンのレビュー・感想・評価

処刑の丘(1976年製作の映画)
5.0
この映画の10年ちょっとぐらい後に夫のクリモフが『炎628』を作ったとは、映画史的に出来すぎじゃあありませんか?
冒頭から絶望しかない映画でして、ハイライトはタイトルにもなっている丘での「処刑」なんでしょうが、絞首刑という方法が方法なだけに前近代的な野蛮さみたいなものを感じてウッ…としたイヤな気分MAX。そして殺害の後に無人の雪原のショットがいくつか続いていたのが印象的です。中盤の見せ場となる牢獄での顔面ドアップの息苦しい時間とは対照的ですが、なんと残酷に開けた景色でしょう。胸に焼き付けられた烙印はダヴィデの星、つまりユダヤ人という人間以下の存在の証。あの無言の叫びのイメージ、解放は死という形でしかこの映画の世界ではあり得ません。男は生き延びたものの恥辱を負い続けることでしょう。
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