逃げるし恥だし役立たず

プリティ・リーグの逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

プリティ・リーグ(1992年製作の映画)
4.0
第二次大戦中、1943~1954年の間に実在した、女子プロ野球リーグに集められた女性選手たちの活躍を実話に基づき描いたスポーツ・ドラマ。『レナードの朝』のペニー・マーシャル監督の劇場映画第四作。
1988年にニューヨーク州クーパーズタウンの野球殿堂に降り立った一人の老婦人の脳裏に過去が甦る。1943年、戦火の拡大でプロ野球選手も戦地へ駆り出され、大リーグから選手が消えたメジャーリーグは運営の危機に瀕していた。オレゴンの片田舎のソフトボールのスター選手であるドティ・ヒンソン(ジーナ・デイビス)とキット・ケラー(ロリー・ベティ)の姉妹の元に男が訪ねて来て、世界初の全米女子プロ野球リーグに参加しないかと誘われる。気乗り薄のドティ・ヒンソンもキット・ケラーに引きずられる形でシカゴに向かう。スカウトされてきた女性たちは選考会の後、チーム毎に振り分けられ、ドティ・ヒンソンたちが配属されたのが"ロックフォード・ピーチズ"、元ホームラン王だが今や過去の人である監督のジミー・ドゥーガン(トム・ハンクス)や田舎の主婦から元ダンサーなどの面々と合流するが、そんな彼女たちをスタンドで迎えたのは、女が野球なんてという好奇の視線とガラガラの空席だった…
ジーナ・デイビスが投げ!マドンナが歌って踊り!トム・ハンクスが吠える!世界初の全米女子プロ野球リーグの女性プレーヤーたちの活躍と云う題材だけでも十分ドラマチックなのだが、マドンナ(メイ・モーダビート役)を始めとする個性豊かな女優陣が大健闘、肝心の野球シーンも上手く演じていて、一見派手に見えるが内容は堅実で、其々の背景をテンポよく描きつつ、友情や姉妹の絆が巧みに織り込まれたストーリーは素晴らしく、物語が進むにつれてバラバラだったチームが心を一つにして勝利を目指していく展開は観ていて否応なしに燃える。
『プリティ・リーグ』なんて最低な邦題から大味で派手なスポコン映画の印象を受けるが、原題は『A League of Their Own』、悲惨な戦争下に激しい女性差別の時代、様々な事情を抱えながらも、逆境に負けず自分たち自身(Their Own)の人生の目標を実現しようと、汗と埃に塗れて白球を追う彼女達の姿が力強く輝いて、今でも多くの人に観て欲しい隠れた感動作品である。
古き良きアメリカの日々が漂うファッションやクラシカルな球場の看板などの背景に、故郷の父親と別れ列車に乗る場面、夫が戦死した電報を控え室で全員の前で渡す場面、妹キット・ケラーが姉ドティ・ヒンソンに向かってホームへ突っ込んで行くクライマックス、ラストで昔の仲間との再会を躊躇する老ドティ・ヒンソンの仕草、彼女が監督との再会が叶わず監督の引退までの記録を眺めるシーンなどの映像は、彼女たちのドラマチックな人生に芽吹いたほろ苦い青春の1ページに色を添える。ドティ・ヒクソン(ジーナ・デイビス)が野球選手として成功するも、負傷して帰還した夫ボブ・ヒンソン(ビル・プルマン)を慮り、惜しみも無く立ち去る裏にある葛藤こそが、物語の源泉の筈なのだが、案外表層的に描かれているのが残念だが、一方でジミー・ドゥーガンと云う一人の男の再生の物語にもなっていて、娯楽映画でありながら深い人間ドラマに仕上がっているのが本作の凄いところだ。
大昔に友人に誘われて嫌々試写会に行ったのだが、あまりの面白さに隠れて泣いちゃったりして…最近、その友人に久しぶりに会って『プリティリーグ』ってさぁって聞いたら、何処の風俗店だった?だって…やっぱりさぁ邦題がダメなのよ…邦題を付けた奴ちょっと来い!