せんきち

激動の昭和史 軍閥のせんきちのレビュー・感想・評価

激動の昭和史 軍閥(1970年製作の映画)
3.4


アマゾンプライムにて。激動の昭和史 沖縄決戦と違い地味。資料映像の引用も多く予算なかったであろうと推察できる。キャストで予算使いきったんじゃないかと。


コロナ前に本作を観ていたら、昭和史に興味のある自分であっても地味な凡作と切り捨ていていたと思う。でも本作は今観ると傑作なのだ。


本作の前半は2.26事件以降増長する軍部と対中、対米強硬派、それを煽るマスコミ、国民の声によって勝てぬと知りつつも開戦を止められない東条英機達が描かれる。

何度も会議をしながら、アメリカに勝算がない、やりたくない、でも止められないのサイクルで開戦せざるを得ない空気になっていく。

このどうしようもない感じは私達がリアルタイムで経験してることだからだ。

やれば絶対感染者が増えてろくなことにならないオリンピックを誰も中止できない今ともろかぶりで大変恐ろしい。

ヒトラーやムッソリーニの様なカリスマ性のある怪物ではなく、ただの小心もので仕事のできる官僚に過ぎない東条英機がファシズム国家の一翼を担っていたと思うと日本型ファシズムの異様さが分かる。

国のトップが責任をとらないことで成り立つ、一度決めたら誰も途中転換できない国家体制。

本作は官僚に過ぎない東条英機だけを悪役にしない。大戦末期に特攻隊に任命された黒沢年男が毎日新聞記者の加山雄三に言う呪詛の言葉が強烈だ。「負けそうになったら東条、東条と言うがお前ら(マスコミ)に責任はないのか!勝つ戦争ならやってもいいのか!日本人を戦争好きにさせたのはお前らじゃないのか!」

本作で最も重要なメッセージを死にゆく凡夫に言わせるのがいい。クライマックスが決まるとぐっとくる。これまた凡作な『あゝ決戦航空隊』もクライマックスの台詞で一気に印象がよくなる。

あと、ラスト。テンポが良すぎてブラックユーモアを越えてモンティ・パイソンみたくなって終わるの。笑かそうとしてんのかと。
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