どーもキューブ

東京物語のどーもキューブのネタバレレビュー・内容・結末

東京物語(1953年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

小津安二郎の東京物語

2016年絶賛全国展開中のリバイバルプロジェクト
「午前10時の映画祭」

今期わが越後最終プログラムの「小津安二郎」
遺作である「秋刀魚の味」と「東京物語」を上映。

「秋刀魚の味」は、東京のどこかわすれたけど劇場で見た記憶あり。ラストの岸田今日子の軍艦マーチからの決めポーズの長廻しを良く記憶しています。

今回は、DVD所持してるけど、あえて、見る。廉価発売2800円。

出会いは、確か廉価版の松竹ビデオです。

小津のビデオの初期は、イラスト版のビデオもたくさんありまして、初期作品を借りた記憶、「風の中の雌鶏」とかね。

昔、東京の松竹の直販のビデオ発売所がありまして、そこに行って一人で松竹ビデオのジャケットをながめて、興奮していた若者でした。今あんのかな。そこにいって、買わないけど、見て興奮するということをやってました。いらない情報。

「東京物語」を3月3日ひな祭りに見てまいりました。たくさんのお客様がいて良かったです。




正直、あんまり内容もうるわすれ具合で行ったんですけど、
しっかり
涙がこぼれるんですよね。それは、笠智衆の笑顔に今回は感動したんです。
ラストの受け入れる瞬間というか、原節子が去り際のところです。

いやーーーー、やはり 魂を感じるんですよね。これ。
ひと筋縄では、できてない。たくさん撮り続けてきた監督の積年の積もり積もったネタというか、野田けいごと毎年毎年合宿してねりまくり作ってきた最高の瞬間といいいましょうか。

「東京物語」であり「広島物語」であり「日本物語」じゃないかなと。

私、ずうううううっと初見からおもっているのが、

本作は、
「あいさつする」物語であるということ。
「小津のロードムービー」であるということ。
「小津の生と死」を表現したさくひんであるということ。

なんじゃないのかなと思ってきています。

本当にいっぱいこと あいさつをかわすんですね。あいさつをしまくるんですね。

「おおっありがとう、おはよう、あがろうか、おかえり、ありがとぅ」と結構な回数かわしあいます。

家族の当り前を「あいさつ」と小津様式カメラアングルに閉じ込めた日本論なんて書いていた方もいらっしゃいますし、一階と二階のショットの映画だと某評者は、書いていたような気がします。ぜんぜんわかりませんでした。

勿論本作の家族の崩壊たる親と子の関係性や他人行儀や家族の会話にいちいち感動やショックを覚えつつ

東京と広島との描き分けや
小津の画面左下まで小道具を配置する美術に驚愕しつつ
東山千栄子の母性たるおばあさんにほっこりして、だいじょうぶ?と見ながら心配しつつ
笠の立ち振る舞いに老いをかんじつつ

子供のギャグもオモロイです。
「いさむちゃん」のくだりでは、お客様クスリと会場が笑いに包まれます。
「なんだい、いさむちゃん!(いさむプイといなくなる(笑))」

冷淡な現代人たる佐田と小津映画の台風の目と私はおもっている、杉村春子先生。究極の「ウザさ」を表現します。親に対する「もう帰ってきたの?」は、必見。

杉村春子は「麦秋」でもそう、おさめたり、たきつけたり、ちょっとうざい、ものいいの女性を小津作品では、やられてますね。必見です。

親と子の映画でもあります。

介護というか
同居なのか
気にしないのか。
愛をつくすのか、
うけながすのか、 

もてなすのか?
もういないのか?

好きなのか?
嫌いなのか?
あなたは親を?家族を?
自分はどこまで親と家族をおもってきた?やれたの?やれないの?

観客にすべて突きつけてくるんですね!そういう親子関係を見てる方に。

海外監督のファンも多い本作
フォウシャオシェン
ジムジャームッシュ
ジョゼッペトルナトーレ(「みんな元気」を撮る)
ヴィムベンダース(「東京画」を撮る)
等々本作お気に入りです。

あらためて見て、
家族の大切や

あいさつのなにげない素晴らしさ、

きつきつの小津画面の素晴らしい配置、

よっぱらう東野と笠の飲みのシーン、
それをつまみいれて文句百を言う杉村のシーン、、、、、あげればきりがありません。

もちろん
家族の別れ
父母の突然の来訪

煙がでるんですよね、「東京物語」ってね。冒頭と終盤で。ある意味それは、「お線香」にもみえるんですね。冒頭からね。煙は船だったり、するんですけど。

そして原節子さんですよね。

彼女を見つめる映画ですね。ラストまで。

彼女を見てどうかんじるか?なんです。
笠のラストのたたずまいとうちわをあおぐあの姿を見る映画なんですよね。

私は、本作を見て、改めて 
家族の大切さとか、
家族つくりたいとか、
親を大事にしようとか、

本当にかなり超真面目なことを次々思い浮かべながら、
涙をふき劇場を後にしました。

いやーーー見に行って本当に良かったです。

「ベンハー」以来久々になにか、気持ちの穏やかになる体験でした。

そしてどこかものがなしい小津の煙、お線香をかいだようです。

なんと素敵な劇場体感「東京物語」でした。いって本当に良かったです。

ありがとうゴゼジュウ!

追伸
次回来月ウールクロスバーグのデニーロ、メリルの「恋におちて」です。地雷踏んでも、墓穴をほっても、飛び出しホフク前進していってきます。

追伸2
また見直したら更新しよう。

2016年3月ブログ記事より再構成
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