スティーブ

東京物語のスティーブのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
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尾道に暮らす老夫婦が、東京に住む子供たちの元へ会いに行く。子供たちが敬遠する中、二人は戦争で亡くなった息子の嫁の元に身を寄せ……という話。

『ドライブ・マイ・カー』のときにも同じようなことを感じたけど、何ということも起きていないはずなのに、なぜか尺の長さをまるで感じさせず、するすると視聴させられてしまう作品というのがあって、本作もまさにそうだった。登場人物がカメラのほうを向いてずっとやりとりをしたりする特徴的な演出はもちろんだけど、監督の見せたいものをたっぷりと見せる、けれど間延びしないテンポは、どうやったらこういう空気感を作り出せるのか、本当に不思議。親のことは嫌いじゃないが、子には子の生活があり、離れて暮らす親はそこにとってもはや異物でしかない、という現実を、悲しいでも辛いでもなく、そういうもの、として描き切る、そんな空気もすばらしかった。なるほど、名作と言われるわけだ、とおおいに納得した作品。