majizi

カポーティのmajiziのレビュー・感想・評価

カポーティ(2005年製作の映画)
3.0
トルーマン・カポーティが、ノンフィクション小説の名作「冷血」を書き上げた6年間に迫る伝記映画。

カンザス州で起きた一家惨殺事件を題材にした「冷血」
「冷血」は原作も未読、映画も未見ですがこの作品を見たら興味がわく!

カポーティはこの時点ですでに有名作家。事件の起きたカンザスに足を運び、被害者家族の周辺や警察へ行って取材を始めるんですが、まあ変なのが来たなって感じの反応と、有名人パワーと人たらしたる能力でグイグイ迫っていきます。

このあたりが、この人の資質や才能でもあるんでしょうね。
一緒に助手として連れて歩くのは4歳の時からの幼馴染の女性ハーパー・リー。彼女も後に「アラバマ物語」の執筆で成功します。
女性と二人だし、あまりみんな警戒してなくて捜査官の奥さんなんて、カポーティの話す映画俳優たちのエピソードにうっとりしてクリスマスディナーにまで招待する始末。

そうこうしているうちに容疑者が捕まり、取材をするようになるカポーティ。2人の容疑者のうち、ペリー・スミスはネイティブアメリカンの血が入っている貧困層で、カポーティは自らの不幸な生い立ちと重ね共感や同情、それから彼への性的な魅力を感じたのかやたらと肩入れしだします。

しかしカポーティの言動や行動の根底には、全て本を書くため。優秀な弁護士をつけてあげる一方で、審議が長引いたりなかなか執行されない死刑にイライラしたりスミスに嘘ついたり(それなのにしっかりスミスの日記はもらう)非道だと感じる場面もあります。

一家惨殺事件も、精神的におかしなシリアルキラーの仕業だったのか?!みたいなセンセーショナルな真相は全くなく、どうしようもない負の連鎖によるゴロツキの犯した顛末、といったお粗末なもの。

しかしそれを深く掘り下げて、6年もかけて完成させ世界中のベストセラーにしてしまえる力量は、確かなものなんだと思います。これは凡人にはできない業・・・

それにしてもこの作品は何と言ってもフィリップ・シーモア・ホフマン!カポーティの喋り方、声のトーン、仕草など完璧。
俳優さん、憑依しすぎて元に戻るの大変そう・・・
majizi

majizi