ふぇりな

戦場のメリークリスマスのふぇりなのレビュー・感想・評価

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
3.7
観てない有名作品でクリスマスなので観ようかなと思い鑑賞。
なかなかに感想書きにくい作品だなと思いました。笑

とにかく良かったのは、音楽とカメラワークと演出でした。
まず音楽については、観る前から既に大好きだった同名曲が最高です!いつ流れるんだろうと思ってたら、しょっぱなから流れ始めたのでびっくりしました。それ以外にも、劇中で流れる音楽は全て素晴らしく圧倒されました。そして、そんな傑作を作り上げた坂本龍一氏が俳優としても参加しているなんて驚異的ですし、何より彼の演技がとても良くていい意味で驚きました。才能溢れる方なんだなと今更ながら思いました。
また、カメラワークと演出についても、自然かつ、(古さがありながらも)色褪せないもので、特にセリアズの過去を振り返るシーンでは夢の中にいるようで感動しました。大島渚監督の作品は初見でしたが、彼の力量には唸らせられました。

観るまではデヴィッド・ボウイが主役かと思っていましたが、実際はロレンスが主役レベルにすごいキャラクターだなと思いました。そもそも英題に入っている時点でそりゃそうか、と後で気付きましたが(笑) イギリス人でありながら日本語や日本文化に造形が深く、そして一個人と国をわけて考えることができる聡明さを持つ…戦時中にそれはなかなか出来ることではありません。彼のような人が一番報われてほしいと願い続ける2時間でした。
日本軍という立場から捕虜を苦しめていたハラやヨノイも、戦時中でなければきっと、そのように歪みはしなかっただろうと思うくらい、戦時中の洗脳や暴力による支配は恐ろしいものだったと思うし、この映画に出てくる人物はどれほど酷くても実際の日本軍よりは遥かにマシだろうと思えました。

デヴィッド・ボウイは主役ではなかったものの、相変わらずの美しさとカリスマ性、存在感が凄まじく、そりゃヨノイも惹き付けられてしまうよなと思いました。日本軍で部下も率いる立場から、複雑な葛藤を抱く描写にある種もどかしさや苛立ちも感じましたが、思っていたほど同性愛描写はなく、多少想像できる程度でした。ただ、「戦争は男の友情を強める」のに同性愛は否定される、というホモソーシャルが描かれていたのが見事でした。
ところで、デヴィッド・ボウイが日本の作品に出演したのはすごいことだと思いますが…何故出ることになったんだろうか?と少し疑問は感じます。キャラクターや設定やストーリー、何かしらに惹かれるものがあったのだと思いますが…。

以前から戦争には正しい者などいない、敵も味方も全ての人間が間違っている、と思っていたので、この作品でも同様に描かれていて共感を覚えました。
不思議で複雑な絆と、戦争の虚しさを感じさせる作品でした。
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