こたつむり

戦場のメリークリスマスのこたつむりのレビュー・感想・評価

戦場のメリークリスマス(1983年製作の映画)
3.6
異なる価値観の衝突を描きながら、根底に流れる“人間”を炙り出した作品。

二十代前半の頃に一度鑑賞しましたが、個人的な「クリスマス映画を観よう!」キャンペーン第四弾として再鑑賞しました。また、初鑑賞の時は滑舌の悪さと片言の日本語で台詞が聞き取れないことに苛立って、物語を楽しむどころではなかったという反省からヘッドフォンを使用しての鑑賞としました。

そうしましたら。ええ。もう。
かつての自分が愚かに思えて。ええ。もう。短気は損気。きちんと作品と向かい合っていなかった未熟な自分に。畜生。畜生。と殴り付けたいと迫る年の瀬に思うほど。

まあ、環境整備しても聴き取り辛いのは変わらないのですけどね。でも、全てを聴き取る必要なんてなく。映画全体を受け止めるように鑑賞すれば理解できたのですね。もう。その事実に気付いただけで。目からウロコやら涙やら目ヤニやらがポロポロと落ちる始末。うは。

そして、今更ながらに本作の配役にも。
頷けるものがありました。226事件で死ねなかったと言う青年将校として、危うい雰囲気を持つ坂本龍一さん。狂気の淵に立つ日本人代表としてビートたけしさん。滑舌の悪さや、無意味な早口や、濃いメイクなどを差し引いても抜群の存在感。うは。最高。

ただ、物語の演出としては。
一番重要だと思える部分を削ぎ落とす描き方に肩が下がる思いです。特に中盤までは前のめりで鑑賞していただけに、クライマックスの唐突さに感情が付いていかず。この前半と後半の落差は何なのでしょうかね。

でも、先ほども書きましたが、短気は損気。
最初の鑑賞の時と今回の鑑賞と。環境整備のお陰ではありますが、大きく印象が変わった作品ですからね。もしかしたら、三度目の鑑賞の時には落涙してウサギの目のようになっている可能性だって否めないわけで。残念な作品だな、と一刀両断にするには性急過ぎると思うのです。

だから、これまでに自分が切り捨てた作品たちも。
機会に恵まれて再鑑賞したら新しい発見があるのかもしれません。諸行無常。万物流転。同じ場所で同じように存在するものなんて皆無なのですから。一期一会でそのときの鑑賞を大いに楽しみ。そして未来の何処かで、違う角度で観る可能性を忘れずに。なんて思うイブの夜に。

メリークリスマス。
メリークリスマス。

あ。最初に書き忘れましたが、今日の感想は坂本龍一さんが作曲した“あの”曲を聴きながら読んで戴けると幸いです。あの曲は反則級の名曲なので、つられて僕の文章も名文に思えるかも…。うは。
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