ラブコメって言うのは、あんまり見ないけど、かなり好きなジャンル。
というのも、なかなか見るにまで踏み出せない。
しかし、この作品は題材が魅力的だったので見てみた。
結果、もの凄い良い映画と出会ったと思う。
誰もが、「もし、あの憧れの俳優とつきあえたら。。」
という、訳の分からん妄想をしたことがあると思う。
この映画は、それが現実に起こっちゃう話。うん、メルヘン。
確かに、非現実だとか、ベタすぎる、不自然とかも言える。
しかし、それはこの作品の表面上だけ把握してちょっとガッカリしてスルーしてしまった人の意見。
実は、この映画がかなり奥深く、全然メルヘンでもない。
ましてや、ベタでもないし、不自然でもない。
かなり「現実」めいた話なのである。
オープニング、この映画の「出会い」。
確かに「出会い」は不自然と思える。
何で、大女優が普通の本屋に入ってくるんだよ。
序盤から、疑問感と不安定感がよぎる。
しかし、この疑問感と不安定感が真の間違い。
観客は何かを見損なっている。
それは、この映画の「恋愛」という側面にあるもの。
そして、映画全体で静かに力強く訴えているメッセージ。
「どんな人だって、一人の人間なんだ。」
情報が大量化している現在、忘れられかけられている問題。
オープニングで本屋に入ってきた大女優アナこそその考え方を強く主張している者。
彼女は大いなる富を手にしているのに、何処か心に穴があいている。
それは「満たされすぎていることに対する不満。」と言えよう。
そんなアナの不満は、ウィリアムの妹の誕生パーティーで述べられる。
みんな冗談だろ?とスルーしたが、あれはきっと本当なんだ。
演技は下手くそで、顔は2度も手術して手に入れたもの。
そんな自分なのに、世間は自分をのし上げる。
彼女の心境はそういうところからかなり複雑だった言える。
そして、アナは普通の人との関係を大切にしたいとも言っている。
だから、アナにとって下流社会とも言えるウィリアムたちが織りなす、何とも一般的で「温かい」食卓の風景を、アナは憧れているように眺めていたのだろう。
そういうアナの行動や言動を整理すると、何故普通の本屋に現れたのかとか、いきなりキスしたのか。
などの、不自然と思われた行動が納得出来る。
そう!この映画は「有名になることの苦痛」、「満たされることの空しさ」を描いている。
しかし、現実的な設定が効いている箇所はまだある。
ウィリアムの友達の女性が、車いすという設定。
普通の「恋愛」だけを重視した映画なら、この設定は絶対不要。
けれど、この映画ではこの設定が見事に効いている。
そして、誕生パーティーのシーンに深みを与えている。
アナが自分の不満をさらけ出すが、車いすの彼女も不満を告げる。
子供が生まれないこと、車いすの生活のこと。
まさにアナの不満とは反対的な「満たされない不満」である。
この両者が、同じ空気に意見を交わし合う。
このシーンは本当に深いシーンなのだ。
本当の「満たされる」は、お金で実現出来る環境では不可能なのだ。
アンにとって、自分を「満たしてくれる」のはウィリアムだった。
ここで、ウィリアムの心の動きに焦点が移る。
観客の、ほとんどがアナではなくウィリアムの立場だと思う。
ましてや、男だったら彼に感情移入しまくると思う。
夢の人だと分かってはいるが、未練を捨てられない彼や、結局は、自分の気持ちに従わず振ってしまうことなど。
アナを相手に彼の行動の空回りは痛々しいほど伝わる。
終盤、二人の関係も終わりを告げようとしているところをこの映画のボケキャラ、リス・アイファンズが割り込む。
「おまえは、とんだ馬鹿者だ!」あの正直さは格好良い。
そして、最後はお決まりだけど、そういう事を踏まえると、非常に感動的な展開で幕を閉じている。
最後に座っているベンチは、中盤に出てくるベンチと一緒なのかな?
もしそうなら、彼らはいつまでも一緒になるということが暗示されている。
本当に良い映画だった。
こんな恋愛もありえると思った。
そして、いつも作り笑いばっかりさせられているアイドルの辛さを痛感した。
やっぱり、みんな人間なんだなあ。。
そして、人間として一番大事なものはなんだろうか。
「満たしてくれる」ものはなんだろうか。
それが、金にたどり着くような人にはなりたくないなあ。。。
とにかく、そういうことを考えさせられた映画でした。
何か、「ありえねーよ!」じゃなくて、純粋な心で見て欲しい映画ですね。
最後に、リス・エヴァンスのファッションが良い。
あの、冒頭のTシャツコレクション、欲しいなあ。。笑
ストーリー 4
演出 4
音楽 4
印象 4
独創性 4
関心度 3
総合 3.8