ミーハー女子大生

老後の資金がありません!のミーハー女子大生のレビュー・感想・評価

老後の資金がありません!(2020年製作の映画)
3.7
【あらすじ】
節約がモットーの主婦・後藤篤子(天海祐希)は、夫の給料や自身のパート代をやり繰りして老後の資金を貯めてきた。
ある日、しゅうとが他界し400万円近い葬儀代が必要になるが、自身のパートの契約が更新されず、さらに娘の結婚が決まって多額の出費に頭を抱える中、夫の会社が倒産してしまう。
そして成り行きで同居することになったしゅうとめは、金遣いが荒かった。

【感想】
普通の主婦、篤子は、展示されている高額なバッグを見てため息をつく。
そこへ連絡が入り、急いで病院に駆けつけると舅が危篤状態だった。

義理の姉夫婦には、舅の葬儀費用の全てを負担するように言われる。
そして、そのまま亡くなった舅の葬儀を、盛大にとり行う事になった。
葬式費用は330万円で、参列者は少なく、大きな赤字となってしまった。

夫の章は、家計は篤子に任せっきりで、篤子はパートで働いてやりくり。
娘と息子を育てあげ、節約をモットーに貯金をコツコツ貯めてきたはずだった。

だが家計は苦しく、老後の資金まで回せる余裕もないのが現状だ。
老後に2000万円が必要だと言われるが、現実は厳しく全く足りない。

そんな中、突然娘が結婚すると言い出し、結婚式の費用が必要に。
さらに、章の会社が倒産、自身のパート契約も満了し、揃って失業する。

次から次へとお金の災難が襲い掛かり、努力も虚しく出費はかさむばかり。
こんな風に、重なる時って不思議と重なってしまうものなんだろうな。
親に子供にとお金がかかるのは、当然だが主婦には切実な問題。

姑の芳乃への仕送りさえ捻出出来なくなり、困り果てた篤子は、義理の姉夫婦との話し合いの席で、引き取って同居すると口走ってしまう。

大量の荷物と共にやって来た芳乃は、超高級志向の浪費家だった。
こうして、篤子と芳乃のお金の使い方を巡る、ドタバタ喜劇が始まる。

草笛光子さんが、スマートで朗らかで凛としてて、とってもオシャレ。
素敵な年の重ね方をしているなぁ、と、うらやましいほどお元気。
いつまでも変わらずに活躍している姿に励まされ、スゴイと感心した。

同居をすれば仕送りもなく、姑の年金も期待した篤子だったが、計画は大きく崩れ、トラブルの連続で貯金は減っていく一方。

老後の資金がない篤子たち夫婦に、明るい未来はやって来るのか?

現代日本が抱えるシリアスなお金の問題を、明るくコミカルに描いている。
自由奔放な芳乃に翻弄されながら、必死で立ち向かう篤子の姿が可笑しかった。

やがて、二人は年齢差を超えた絆と信頼関係を構築していく。
年金問題に対しタッグを組む場面は、微笑ましくて面白かった。
特に三谷幸喜さんが、最高に愉快で可笑しくて笑った。

他にも、超豪華な役者陣が続々と出演し、キャストの妙もあった。
個性豊かな出演者の面々の演技が、随所で楽しめた。

芳乃は体調を崩した事をきっかけに、生前葬をすると言い出す。
篤子は頑なに反対して出席を拒むが、芳乃の本音を知る事になる。

家族とはいえ、互いへの感謝とリスペクトが大事だと教えてくれる。

また問題提起をしただけで終わらず、その後を描いているのは良かった。
お金だけでなく、大切なものは何か、老後の在り方を追求している。

何を捨て、何を得るのか、選択肢は多く残されていると分かる。
また、下手な見得を捨て、身の丈に合った暮らしぶりも大切である。

人生の一大イベントとなれば、張り切ってしまう気持ちも分かるが。
互いの価値観や、優先順位など、考え直す余地はいくらでもあるものだ。

二人きりになった篤子たちは話し合った結果、ある場所を終の棲家に選ぶ。
イマドキらしい生き方で、それもいいんじゃないかと思った。

着地点は底抜けに明るく、ミラクルでハッピーで愉快、痛快。
家族愛、親子愛、夫婦愛を盛り込んだ、温かい人情喜劇だった。

ストーリー 4
演出 4
音楽 3
印象 3
独創性 4
関心度 4
総合 3.7

9/2024