浅学にして知らなかった。傑作というか名作というか素晴らしい。
サモ・ハン・キンポー、ジャッキー・チェン、ユン・ピョウが学んだ香港の京劇学院の物語。
OPからして不穏だ。母に学院に連れられるデカ鼻(後のジャッキー・チェン)。院長の前で母と誓約書を交わす。10年契約でその間の収入は全て院長に帰属すること、反抗には暴力を使うこと、病気には責任を負わない、院長の許可なしに退学できない、契約満了後は院長の世話をすること。
直球の奴隷契約である。デカ鼻は母に捨てられたのだ。全く気づいてないデカ鼻。
少年から青年になるまで厳しい指導が続く。ミスをした時は院長に延々と殴られる。当時の基準では当たり前ではなく、周りの大人もやり過ぎだと諌めるレベルの教育、つか虐待。
不思議なのは、この虐待描写があるのに院長と生徒の関係が悲惨にみえないの。全員、親から体よく捨てられたであろう生徒と院長の疑似家族もの。
切ないのは人生の大半を京劇についやした院長に迫る”京劇というジャンルの終焉”。周りから、これはもう時代ではないと別の道をさとされても「もう少し頑張ってみます」と自分を曲げない院長。
最後まで院長についていった結果、学院の解散と仲間たちとの別離。子供たちに文字さえ教えなかった院長はろくでもない男だと思うが、それでも尚生徒たちとの別れは感動的だ。なんでなんだろ。サモ・ハン・キンポーの演技力のせいか。よく分からない。
つか、ジャッキー・チェンが映画スターになるまで文字が読めなかったって話はマジだったのな。凄え話。
倫理的にアウトな話でありながら、不思議と感動させる映画だ。映画の本質を示すキャッチが素晴らしい。
京劇に未来がないとは知らず、精いっぱい打ち込んでいた
親と離れ、寂しかったけれど今思えばあれほど楽しかった時も、二度とない
サモ・ハン、ジャッキー、ユン・ピョウにとってのトキワ荘の青春だったのな。素敵な映画です。