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父ありきのcyphのレビュー・感想・評価

父ありき(1942年製作の映画)
4.2
フィルム上映で鑑賞 溢れんばかりの光の美しさに目を細める一方でノイズの音が台詞の倍大きくて半分くらい何言ってるかわからなくて笑った とはいえ肝心な流れは細かな台詞が聞こえなくてもわかるのは不思議な体験だった 秋日和の原節子しかり晩春の笠智衆しかり、天然ヒロインポジションの壮年のよき人物が実の子から熱い想いを寄せられちゃうけど天然故に間に受けることもなくあっけらかんとスルーする話が小津あるあるなのなんなんだ しかしわたしはそれが大大大好きなのですっかりメロメロになってしまいました その上本作の佐野周二は顔つきが原節子にそっくりで小津の癖も出ててぐっとくる

有名な釣りのシーンの繰り返し涙がピャッて出るくらい素晴らしいし、若きシングルファーザー(そんな言葉もなかったろうけど)から年老いた愛すべき父になるまでの笠智衆の尊い加齢が見れて最高のファンサ映画 息子がいよいよ持って「父さんと一緒に住みたいんだ」って言い出すシーンの緊張感、そしてその後の笠智衆の長すぎる説教、たまらんすぎ 「人生でいちばん幸せな1週間だった」って台詞もすごい ほんとうにほんとうにお父さんと暮らしたかったんだね 片思いの呪い映画をまさか小津×笠智衆で観れるなんて ありがとう
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