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ペパーミント・キャンディーのkouのレビュー・感想・評価

4.5
男の人生に重ねるように韓国の歴史を描き、なぜ男はここまで絶望しているのか、彼が背負っているものは何なのかを時間を遡るようにして描いた作品。ある過去の過ちが、常に一人の男の心を苦しませ続け、そしてそれが故に何もかもがうまくいかなくなっていく。とてもハードな人生を描いているが、これこそが人生ともいえると思う。

人が年を取る事は不可逆であり、現実での出来事もまた不可逆である。男が望んだ時にはもう戻ることはできず、その残酷さは何の救いもない。一つ一つの選択、行動が彼自身を追い詰めていき、破綻した結果がある事に間違いはない。その非情さを包むことなく描き切っていた。イ・チャンドン監督の突きつけるものだろう。

戻りたい過去は輝いて見えるが、そこにあった数々の未来のうち、選んだのは何も残らない現実。でもそんな辛い事実は人生そのものであるとも思う。いつの間にか後戻りのできない状態になっている。本作はそんな男の一生を情感のある映像で描く。心に刻まれる映画である事に間違いない。「人生は素晴らしい」何度も反芻して考え込んでしまう。
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