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腑抜けども、悲しみの愛を見せろのcinemakinoriのレビュー・感想・評価

3.8

佐藤江梨子のハマり役な作品!(色んな意味で)

ド田舎の訳あり一家を舞台にした、ブラックユーモア溢れるヒューマンコメディ。
なかなかにシリアスな展開が多いにも関わらず、妙にシニカルでアイロニックな描写のお陰か、決して鑑賞側は気分が落ちるような事はない。
それは、浮世離れな嫁役の永作博美のコミカル且つド天然でキュートな演技だったり、妹役の佐津川愛美の闇深い狡猾的なキャラと怪演が、絶妙に重たく切ない内容にまろ味として溶け込んでいるからだろう。
永瀬正敏に至っても、鑑賞側がイライラさせられる焦れったさや、どっちつかずな男を独特なトーンで演じているし、なんと言っても佐藤江梨子の不器用で傲慢な雰囲気が良くも悪くも見事にハマっているから面白い!


メッセージ性がかなり高い作品で、捉え方によっては彼らの不器用な生き方から教訓として受け止めるべき事案が盛り沢山。
自分の都合よく、誰かのせいや何かのせいにして先に進まない事を正当化させてみたり、小さな井の中で信じる自分の才能を、大きな世界線で生かすも殺すも自分次第だと言う事を、不器用な姉と狡猾な妹の対照的な2人の視点から学ぶことが多く混在している気がする。


とは言え、
この作品はあくまでもブラックコメディであり、ともすればホラー映画と言っても大袈裟では無い演出効果やストーリー展開なものだから、こちらの感情の持って行き方もなかなかに複雑で悩ましく監督の遊び心に翻弄されまくる。
そこがぶっ飛んでいて特異な為、結果的に妙な爽快感や満足感を得られるのかもしれない。
しっかりした脚本と練り込まれた演出、そして絶妙なキャスティングと名演技の全てがいい塩梅なハーモニーを奏でている。
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